ボスと右腕と不幸な男


※ちょっっとえぐいかもしれない

《ジョルノ視点》

 彼の名前はなんと言ったか。
 思い出せないわけではない。部下の名前ぐらい把握せずに誰がギャングスターだ。

 彼が「口に出す」自分の名は“ナマエ”、ある一点を除いてとても優秀な男だ。



 自分がパッショーネの頂点として表舞台に立ってから数週間が経過した頃合いだったか。とある賭博場の収支報告にいくつか不審な点があると睨み、ミスタと信頼できる優秀な部下をそこに送り込み調査をして貰ったことがある。そこで彼らが出会ったのが「ナマエ」という人物なのだが、正直なところ、疑いがかけられていたカジノの捜査に置いて彼は関係ない。

 ではどうしてナマエの話が出てきたのか?
 ─彼が当初の捜査目的に関わりのない点で、とある売買に関わっていたからである。結局のところその賭博場では裏の景品としてパッショーネの負の遺産、つまり麻薬が関わっていたのだが、捜査という名の武力抗争に発展したその場で彼は流れ弾に当たる。
 銃で簡単に人が死ぬと思ったら大間違いだ。脇腹を大きく負傷し苦しみに悶えていたナマエをうちのミスタが発見し、手当てをした所なつかれて様々な話をしだした。
 
 始めに僕が睨んでいたカジノの違法な収入源は麻薬のみだったのだが、彼はその場の隅っこの方で行われていた、別の商売の『売り物』として扱われていたという。
 それ以前にもいわゆる美人局に騙される、当たり屋と結託したドライバーに財布も貯金も全て持っていかれる、財産を取り戻そうと駆け込んだ裁判所にすら騙されて莫大な借金を抱え妹を連れ去られ……ミスタが話を聞いてやったのが良かったのか、今回のカジノに関係のない部分までナマエは泣きながら暴露した。しかしそれらも今ではほとんど解決している。件の妹は助けられなかったが。


 彼のお陰で不透明だった裏社会の諸々に捜査という光を当てられたことには感謝している。いるのだが、いかんせんこの男は極度の不幸体質だったようで、紆余曲折ありパッショーネの一員として働く今でも時おり面倒な案件を持ち込んでくるのだ。
 先程金が入り用と言っていたのもそうだ。普段の彼はトラウマのあるカジノには一切足を踏み入れない。がしかし、ここ最近のナマエは足繁く通い詰め金を浪費している。そしてアンナという女性、最近その女性と付き合い始めたらしいのだが詳細を一切こちらに寄越さない。

「ジョルノ……ああいやジョジョ、あの女の素性が分かったらしいぜ」
「ありがとうございます」
 回想に浸っている場合ではなかった。無駄な時間を過ごしてしまったと自分を叱咤し、ミスタから渡された資料を読む。


───クロ。
 “いつものことだ”などと僕がため息をつく程度には彼は女運も悪い。すぐに部下に調査に出向いてもらえるよう通達し、読み終えた紙の束をシュレッダーにかける。
決算書のようにファイルに綴じて仕舞うような案件ではない。

彼が何も知らないうちに、全ては闇のなかに葬られるのだから。




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過保護系ボスに気に入られたのが運のツキ。





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