陽気な俺とコロネなボス


『チャオ!やってる?』
ノックなしにドアを開けば、我らがボスの右腕がこめかみに拳銃を当ててきた。そろりと両手を挙げればなにかに気づいたかのように銃口が下ろされる。
「なんだお前かよ、てっきりジョルノの命狙ってきた馬鹿かと思ったぜ」
『なんだとはなんだ』
お陰でピストルズの住処にイラネー油がついちまったぜ、などと失礼なことを抜かす赤と青の格子柄なんてイカれた服を身に付けているコイツは、現在イタリアはネアポリスの街に蔓延るギャング“パッショーネ”の幹部「グイード・ミスタ」。

「大衆食堂に来る壮年の男性みたいなこと、他所ではしないでくださいよ。一応貴方も我が組織の仲間なんですから」
『俺はまだオッサンって年でもないぜ』
「耳を作り替えて差し上げましょうか」
平時と変わらない様で厳しいお言葉をくださるこの少年、なんとまだ学生だそうだ。名は「ジョルノ・ジョバァーナ」、黄金色の頭髪と蜂蜜色の甘い瞳の内にとんでもない化け物を飼っていやがるのだが、その化け物は正しき道を指し示してくれるイカした奴なので俺はそこを気に入っている。

「用があって来たんでしょう、何の用ですか」
『いやあ、賭博でスッちゃってさ!悪いけどおカネ貸して「そうかそうか“また”か」まってまってミスタ!別に組織の金に手ェつけた訳じゃないのよおぉぉ〜〜ん!?』
再び真っ黒な穴が、今度は俺の眉間にピッタンコと張り付く。ミスタの拳銃は普通のに比べ連射しやすいよう引き金が緩めに整備されていて、つまり今彼がその指でちょっとでも殺す意思を示せば俺はお陀仏ってわけだ。仮にも人の命一個分なのでもうちょっと躊躇してほしい。ギャングじゃないんだから。

「数秒前にパッショーネとして態度を改めろ、と言った筈ですが」
『いやいや、俺の仕事は清く正しく生きることじゃあないだろ?それで……いつまでに返せば良い?明日?明後日?女の子とデートする前の日?』
チャキ、と軽く金属同士が擦れ合う音がすぐ右の耳から聞こえてきた。
『おいおいもう三度目だぜぇーーーっ!いい加減にしてくれよなあーーっ!』
「お前が全く懲りねーからだよこのスカタンッ!いいか三度目の正直だぜーー
ッ!」
『仏の顔も三度までって言うだろ……もういいさ、給料日ってそろそろだよな?今度こそ一山当ててアンナに誉めて貰うのさ!』
と決意を新たにその場を去ることにした。このまま食い下がってても俺の頭が体とオサラバするだけだろうし、そんなことしたら彼女を泣かせることになってしまう。良い男失格だけは免れたい。
俺は振り返らずにボスの部屋を出た。



ボスが俺をどのような顔で見送ったかも知らずに。



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オチはまた後日









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