君と未来を歩む | ナノ




彼がそれに気づくまでの話



※前の話がパス指定で見られなかった人たちへの説明として
凶悪な殺人・脱獄犯として悪名高い片桐安十郎との強制監禁生活を余儀なくさせられた西之谷。だが殺人犯の思惑通りになる前にプッツン来た少年は、脱走計画を建て実行に移す。
しかしそれを見破っていた片桐は西之谷の右目を負傷させ、もう一つの目も失明させようと近づく。だが何らかの力により西之谷は片桐の拘束から逃れたのだった。









「これは何本だ?」
目の前で露伴がピースサインをしている。楽しいわけじゃあない、だってその顔はとてもむずかしい顔だ。
『2本』
正解を答えると、そいつはほっとした顔をする。毎日毎日同じことをしてくるんだけれど、もう目は治っているわけだしいちいちやんなくても良いのに。
露伴が露伴らしくないとチョーシくるうんだけどな。







あの事件からもう何ヵ月もたって、おれも露伴も2年生。あの後あんじゅうろうさんがなぜかふっとんでいって、むがむちゅうで家にたどり着いて、お母さんとお父さんと友達みんなにたっぷり心配された。あんじゅうろうは空き家の中できぜつしているところをフホーシンニュウでつかまった。もう東京のこのまちにはこないだろう。

右目のところは白目がちょっときずついただけですぐに治ったし(当たったときはあんなに痛かったのにな)、あいつといたときのアザやすりきず、切りキズも無くなった。それなのに、露伴がおれのそばからはなれなくて困る。


「そこ、段差あるぜ。ばかやって転ぶなよ」
『わーってる』


「今11時だぜ」
『時計見りゃあわかるぜぇんなモン』


「今日はうちでご飯食べないか?こっから近いの僕んちだし」
『……なあ露伴、おれはもう大丈夫だぜ』
そう言うとそいつはむずかしい顔を作る。こんな時にかぎってななみもあきおもあそびに来ないし、露伴はあの事の話になりそうになるとだまっていてきもちわるい。本当におれは大丈夫なんだぜって、そろそろイラッとしてきた。
どうすればいいだろうかと考えていると、なにかのどの辺りがざらざらしてきた気がする。

この感じ、前にもどこかであったな。
『《露伴》』
《ガガ、ピーッ》とおれののどからもきかいのような変な音が聞こえる。
目の前のそいつがおどろいたように目をむく。もしかして今の音が聞こえたのか?


………? なにかがおかしい。だまっているのはさっきと同じなんだけど、さっきのが上手いこと言おうにも言えない感じなら、今のこいつは命令をまつロボットみたいだ。しかしここで止まってたらあやしまれるな。


『《おれはもう何ともない。信じてくれるよな?》』

「………うん」
『!』
露伴がすなおに返事をした、だと!?言っちゃあ悪いがちょっときもちわるいな。
今度はおれがおどろいたが、その前になんだ今のは?あんじゅうろうさんにエアガンを突きつけられたとき、あのときのはげしい気持ちと同じようなかんかくがした。
ぞ、っとせなかに急に風がふいた気がして、思わず露伴から一歩下がる。だが次のしゅんかんにおれの手がとられ、ぐんと引っ張られる。

「……何してるんだ、はやく行こうぜ。今の時間ならご飯食べて原っぱ行けば誰かいるだろ」

何だって?
露伴は引いたおれの手をつかみ直して、足元も気にせずどんどん歩いていく。
さっきまでおれの目ばかりに集中していたのに?





引かれていく途中で、普通のお兄さんとすれちがった。
手元の本にばかり目がいってて、落ちている石には気づいていなかった。
あぶないと思って『《転ぶぞ!》』と言ったら、石の一歩手前のなにもない場所で転んだ。
『「今のは……」』
「……どうした幸彦、何かあったか」
『……いや、《何もないぜ》』


次の日。
なつかないことでゆう名なねこがいたので、『《おれにすりよってこい》』と言ったら足元に来た。しばらくなでていたけど、あまりにもはなれないのでうっとうしくて、『《もういい》』と言ったらはっとしたようにおれの手を引っかいていきやがった。ちくしょう。
けれどもしかすると。


次の日。
わくわくしながらおかあさんにおやつをくれと言ったら、なぜか聞いてくれなかったうえに言葉づかいでおこられた。


その次の日は露伴とケンカしたときに『《だまれ!》』とさけんだ。こっちがおどろくぐらいにすぐだまったけれど、そいつはじっとおれの目を見てきた。何か僕はおまえのひみつを知っているぞ、って目が言っていたように見えて、『《何かしゃべれよ》』と言ってすぐにげた。またその次の日にあやまった。





どうやらあんじゅうろうさんの所から逃げ出してきたときから、変な力が使えるようになっているみたいだ。相手を自分のめいれいどおりにする力。マンガみたいな話だな。
だけど、めいれいを聞いてくれる時と聞いてくれない時があるみたいだ。正直いらない力だけど、何か決まりがあるってんなら気になっちまうよなあ?

何がちがうのか?ぼんやりと歩いていると、この前のねこが向こうからやって来た。





きょうみがあった。




 きょうみがあった。




       興味があった。もしもの話だ。




               『《しね》、っていったら』




    目の前でそのねこはくずれ落ちて、たおれてそれきり動かなくなった。









『……………………………!』
………やってしまった。


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