君と未来を歩む | ナノ




しりとり(中)



その日はとても暇だった。
ので、露伴にしりとりをしようと持ちかけた。

「うるさいな、僕は今次に先生に送る絵を考えている最中だ、邪魔するなよ」
『漸く取りかかる気になったのかよそれェ』
大袈裟に腕を組んで机に向かうそいつは、たしか昨日までおれと一緒に遊びまくっていて、通信教育の“先生”から出された課題のことなんてこれっぽっちも話題に出さなかった筈だ。
ちなみに明日までには送付しなくちゃあいけないらしい。

「冷静に考えればどうして真っ先にコレを片付けなかったんだろうな。僕らしくもない」
『いつものおめーならパッ!とやってサッ!だものな』
「なんとなく言いたいことは分かるが黙れ」
『……冷徹ってこれてめーの事なんじゃあねえのかな。話しかけたの露伴からじゃあねえかよ……』

口を尖らせて抗議してみるが、どこ吹く風といったように机に向かう露伴は暫くして、何か良いアイデアを思い付いたようだった。
「よし」と満足そうに呟いたそいつは鉛筆を手に持った数秒後に下絵を完成させる。何年も積み重なった技術は発言する一瞬の隙を与えず、次に摩擦で火がつきそうなぐらいのスピードで見事に鉛筆画を書き上げた。


さて、どう返そうかと悩んでいると、あっちから完成した絵を見せてきた。
「どうだろう、この絵。何に見える?」
何に見えると聞かれてもなんと答えれば良いのやら。
とりあえず一つの部屋の情景のように見えるその絵をじっくり眺めて言葉を探しているうちに、だんだんと露伴の顔が険しくなってきた。
これはすぐさま答えないとヤバそうだ。
『る、ルームだ!ルームッ!』
雰囲気に気圧されて思わずやってしまった。
ちょっと苦しい繋ぎ方だったが意味は通るだろう、相手の出方はどうだ……?

顔を微妙に背けながら露伴の様子をうかがうと、若干の間を挟んでようやく口を開いた。
「無理矢理すぎるんじゃあないか?間違ってはいないけどさ」
『サア、なんのコトかなあ〜ッ!それより時間がねえんだろ、早く封筒に入れねえのかよその絵ッ!』
「延々と続いているこの会話を終わらせてからだな」
呆れたようなその視線にはお前の遊びに付き合ってやっているんだから早く終わらせろ、と迷惑そうなメッセージが隠されているようだった。もう少し遊びたかったのだけどしょうがない、終わらせるか。

『な、な……長々とお付き合いいただきアリガトーございましたァン!はい終わり!』
「理解不能」
『えっ』
さっきしりとりは終わらせたはずなのだけれど。ガサガサと引き出しを漁り大きめの茶封筒を取り出して、くるりと此方に視線を送る。

「もう少し続けたかったんだろ?僕がこれをポストに投函するまでなら付き合ってやらんこともないがな」
得意満面で封筒をヒラヒラさせている露伴は、おれが思っていたよりも随分としりとりが楽しかったみたいだ。それならそうと言……わないなこいつは。むしろ今のが素直すぎるぐらいだ。

『なんてこった……』
「楽しかったんじゃあないのか。ならここで止めても」
『あー分かったやります!やるから待てって!』
いつのまにか振り回される側になっていたおれは、露伴の気が変わらないうちにと必死で考えを巡らすのだった。



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