恋は土手南瓜


 ※主人公の家はまだメッタメタになっていません


『……』
(薄暗い玄関。ドアの前におかれた二箱の段ボールを前に、名前は苦悶を表情にしたように顔にシワを寄せ頭を抱えていた)
『母ちゃん……アタシにどうしろってんだ』


《午後五時、ジョセフ、アヴドゥル、ポルナレフの滞在するホテルの一室》

「「南瓜が届いた?」」
(ジョセフとポルナレフが同時に発した言葉を受け、名前は重苦しく頷いた。)
「何をそんなに塞いでいるかは知らんが、実家からの宅配便だろう?ありがたく受けとれば良いじゃあないか」
「そうだぞ名前、母や父からのご厚意は大事にするものだ」
『だからって二箱同じ野菜ってのは流石に……』
(花京院とアヴドゥルの説教にうんざりと答える彼女の様子を見て、承太郎は帽子を被り直して煙草に火をつける。フリント式ライターの火打ち石が鳴らす金属音を名前は聞き逃さなかった)
『承太郎、アンタまた』
「じじい、今日はコイツの家でメシを食う」

「! ホホーウ、そうかそうか」
『えっ、食べるの手伝ってくれるのか』
(名前の顔色が漸く明るくなったのをじっと眺め、また深く学帽を下げる大男。ソファに深く座っていた銀髪の男も勿論、彼女に声をかける)
「名前ちゃん、オレ達もお呼ばれ……」
「ポルナレフ」
「なんだよ花京院……ハッ! ま、まさか」
(神妙に頷く花京院。ポルナレフはあの無口な友人の行動に水を注さずに済んだことを喜び、ニヤニヤと二人を見送ることにした)

『そうだ。せっかくだから、皆さんもどうですか』
「OH MY GOD! ルームサービスを既に頼んでいたのをすっかり忘れとったわい」
「せっかくだが、わたし達三人はここで済ませようと思う」
「そーだぜッ!どうしてもってんなら明日にでも南瓜のおやつ持ってきてくれるとウレシーなーっ」
「おい」
『いいですよ。なら花京院』
「家族と食べるよ」
『……そうか。それじゃまた明日』
(食い気味に断る四人から若干目を反らしつつ、先に行ってしまった承太郎を追うように小走りで出ていった)

「……おい花京院、ちょっと耳貸せ!」
「なんだ?」



《午後八時、名前の家》
(彼女の家がアパートの一室であることを本編で言及したか覚えていないが、とにかく名前と承太郎は二人入れば中々狭苦しい台所で作業をしていた)
「……!」
『どうした』
「あのじじい、こちらを念写してやがる」
(計量カップを洗っていた承太郎が忌々しげにため息をつき、手の水気を払う)
「明日持っていく菓子は三人分にしろ」
『孫の癖に手厳しいな』
「孫だからじいさんの覗きを咎めてんだよ」
『友達の覗きも注意してやらないと駄目なんじゃあないの?』
(チラリとベランダの窓、その外に視線を向ける。チカチカと切れかけの電灯が明滅を繰り返すたびに、緑色の煌めきが姿を表す)

「スタープラチナ《星の白金》ッ!」
『うおおぉーっスターさーん!』
(黄色い声援を受けて飛び出した承太郎のスタンドは、数秒もしないうちにハイエロファントグリーン《法王の緑》の首根っこを掴んで戻ってきた)
『流石スターさん筋肉の収縮から不意に放たれる一撃で相手もイチコロ!』
《殴られるのは最初っきりにして欲しいな》
「殴ってはいねーぜ。人聞きの悪いことを言うな」
《発案はポルナレフだ》
『「やっぱりな」』

『ウチに来なよ、まだ腐らせるほど南瓜があるんだ』
(スタープラチナが首から手を離せば、花京院のスタンドは音も無くガラス戸を通り抜けていく。最後に左手の指を三本立てて、ずるりと急行直下した)
「三十分か」
『あ、あのさ』
「?」
『その、承太郎は賑やかな方が好き、なのか? ウルサイのじゃあなくて』
(何を言いたいのか分からない。珍しく口篭る名前に首を傾げる)
「てめー、はっきり言いな」
『……覗きがなけりゃ、久々にあんたと二人で過ごしたかったよ』

(沈黙)

『別に花京院達を邪険に思ってはいないけどな! 私たちの友情は三年分の重みがあるから男同士のアレコレに嫉妬はしないよ! 友達だもんな! それと私は祭りの日は賑やかなのが好き!』
「……」
『承太郎?』
「……また、今度」
『! ああ!』




「ぐっ」
「おい花京院? 承太郎に一発食らったのかよ」
「違う意味で一発……それと君のせいだからな、僕に彼らの偵察もとい出歯亀をしようなんて言い出したのは」
「ウッヒヒヒ、そーだな! 一緒に承太郎達に怒られようぜェー」
「そんなもの君一人だけで良い!」




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