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暑苦しい男共


 突然だが、“男らしい体型”ってどんなものだろう。
 当然返ってくる答えは「筋肉質」だとか「肩幅ががっしりしている」とかその辺だと思う。実際僕もそう思っているし、できれば筋肉をつけて“見れる”体になりたいとも常々考えている。

 だけど何事もやりすぎは良くないと思うんだ。例えば……
「何故こちらを睨むように見るのだ名前」
「このワムウに何か用事か?名前」
「このおれにガンを飛ばすとは良い度胸だな名前」
「なんで語尾に僕の名前つけんの君たち」
このお三方とかね。


 僕の学校にはヤバイ人物が三人いる。
 一人はエシディシ、とってもムキムキで感情豊かな同級生。感情が豊かすぎて、怒りが限界点に達すると大声で泣き始める特殊な癖を持っている。
 一人はワムウ。ものすごいムキムキで真面目な同級生。頑固が服を着ているような人間で融通が聞かない上に影を踏むと何故か追いかけてくる。
 一人はカーズ、こいつが一番厄介なムキムキで、研究者気質っていうのか?危険な事であっても興味を持ったら突っ走るある意味アホだ。そして他人を省みない性悪野郎だ。

「貴様、今カーズ様を侮辱したな」
「なんで口に出してないのにってアイタタタヘッドロックッ!上腕筋が僕の頭蓋骨を締めつけてるゥー!!」
 マジで痛いんだよこいつらが技かけてくると!特にワムウは何らかの格闘技をやっているのか、一番肉体の圧迫がすごい。羨ましいとか以前にめちゃくちゃ痛い。死ぬわこんなん。
 そもそも中学生とか高校生ってまだ成長期だよね?なんでこいつら今の時期から完成形なんだよ!よしんば成長期が終わってないとしても大人になったらどんな筋肉ダルマになるんだ?シャツのボタン飛ばない?
「おい名前」
「なんdヘブッ」
振り返った瞬間やたら堅固な何かに顔が叩きつけられる。カーズの胸板だ。
「我らは達磨とやらでも人間でも無い、強いて言えば究極生物を目指した者だ」
 これだもんなあーーーーーーッ!こいつらの一番ヤバい所はこの“究極生物”ってワードだよ!
「前々から思ってたんだけどさあ、その究極ウンタラだのハモンセンシだの訳分からない単語を口に出すのは止めた方がいいって!ワムウも同級生なんだからカーズのこと“様”つけて呼ぶべきではないし、エシディシもさっきから黙ってないでこいつらに現実を見せてやってくれよッ!!」
「今カーズが言ったことを否定しろ……と?そういうことを言ってるんだな?」
「そうだよ!ついでに後輩のサンタナ君とかも呼んできて!あいつもカーズのやることなすこと疑問持ってないからあぶな……」



「残念だが、俺様はカーズの味方だ」




「ええーーーーーッ!?」
 いつもワムウとカーズの二馬鹿の後ろで茶々を入れてるだけだったから完全にこっちの仲間だと思っていたのに!ひどい裏切りを見た!
「俺がいつカーズを否定したのだ?一度でもこいつのやることを俺が止めたことがあるかァ〜〜〜?ン?」
「え、だって、そんな」
「貴様の考えは全て貴様の勘違いだ、甘ちゃんめ」
 まるで付き合ってた女が実は二股をかけていたかのような衝撃!いやこんなムキムキマッチョどもとお付き合いしたくはないけど。男同士だし。

「名前よ。このカーズの発言が全て!信用に値しないとでも言うのか」
「そうは言ってないだろォ?テスト前の山勘とかマジにありがてェ〜って感謝感激の至りだよボクちゃん」
「ならばそれで良いではないか」
 カーズはワムウを下がらせ、窓から差し込む太陽の光に比較的整った顔面を晒した。
 こう言ってはなんだけれど、カーズやエシディシ達が日の下に突っ立っているのが時折、僕はどうしても我慢ならない。温かみのある直射日光なのに、ともすれば次の瞬間彼らは焼き殺されているんじゃあないかと……夢にまで見るのだ。
 

 「我らがここに存在し、貴様のような下等生物と言葉を交わす。これも一つの“世界の在り方”なのだと、ちっぽけな脳みそを空にして信じ込んでいればそれでよかろうなのだ」




「……結局何も解決していないじゃあないかーーーーーッ!!」
「黙れ名前」
「負け犬の遠吠えというやつか名前」
「見苦しいぞ名前」
「だからなんで語尾が僕の名前なんだこのスカタン共ォッ!」
 
 何事もやり過ぎは良くない。体を鍛えるのも、他人に深入りするのも。
 傍で一緒に騒ぐだけで満足できる相手、それが僕にとっての彼らなのだ。









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