味わう


「改めまして、永井広道です。どうも宜しく。」


敦士を連れ出した後、担任にこっぴどくしぼられた俺は、本日二回目の自己紹介をしている。

あ、でも一回目はまだ自己紹介してなかったんだっけ。


俺が自己紹介をすると、教室内に笑いが広がった。


「永井、これからは勝手な真似をしないように。」


担任に強く念を押される。


どうやら、転校初日にして目を付けられてしまったみたいだ。


「じゃあ、永井は窓側の一番後ろの席な。困った事があったら隣の谷口に色々教えて貰え。教科書はもう買ってあるだろ?一時間目は、俺の現国だからな。」


そう告げられ、俺は頷く。



よっしゃ!窓側の一番後ろってベストポジションじゃんっ


…ただ、敦士とは席が離れてしまったなぁ。


俺は言われた席に向かう。




「俺、谷口洋介。宜しくなっ」



席に着くと、隣から元気の良さそうな奴に話し掛けられる。


「あぁ、宜しく。」

「お前、初日から強烈な奴だな。何で急に黒田連れて出て行ったんだ?」

「…敦士とは前の学校の友達なんだ。」

「マジかよっ!?…すげぇ偶然だな。だけど、普通知ってる奴でも急に連れ出したりとかするか?」

「…そのぉ、再会が嬉し過ぎて、皆のいない所で喜びを分かち合おうと思ったんだ。」

「ふーん。…変わった奴だな。」


やっぱり、敦士を外に連れ出したのはまずかったな…。





担任のHRも終わり、敦士の所に行こうとしたら周りにすっかり囲まれてしまった。


「なぁ、お前どっから来たんだ!?」

「何で急に黒田連れて出てったんだよ?」

「お前、面白い奴だな!」

「永井くぅ〜ん、メアド教えてぇ!」

「ねぇねぇ、彼女とかいるの?」

「どんな子がタイプ?」

「今日の帰り、私達とどっか行かない?」


…クソ、面倒くせぇ。


昔の俺なら女子からこんな事言われたら嬉しかっただろうけど、今の俺は敦士が好きなんだ。



頼むから敦士の所に行かせてくれ!



敦士の方を見ると、敦士は寂しそうな顔をして教室から出て行ってしまった。


「ちょっ、待ってっ」


俺は叫んだけど、敦士には届かなかった。


「え、待ってって何を〜?」


お前らじゃねぇよ…。


「おいおい、そんなに質問責めじゃ永井が困るだろ。」


谷口が横から助け船を出してくれた。


谷口がさっき俺が話していた事を代わりに話すと、「お前に聞いてねーっ」と男女から総ツッコみされる。


どうやら、この谷口という男はクラスのムードメーカーらしい。



それから数分後に敦士が教室に戻って来て周りと会話をし始める。



…あれが、敦士の新しい友達か。



敦士と話している金髪の奴を見て、急に山田を思い出した。







アイツも相変わらずバカしているのかな…。



今夜、電話でも掛けてみるか。



そして、担任が戻って来て一時間目の授業が始まった。








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