最終章


【黒田視点】


―季節は10月。


実家の近くにある県立西田高校に俺が転校してきてから1ヶ月が経った。

西田高校は芦沢学園より偏差値が低い為、俺は容易に入試をパスする事が出来た。

何故、前より偏差値が低い所を選んだかというと、両親が俺を側に置きたがったからだ。


俺は芦沢学園にいた頃、何故学校に通わなくなったかは両親には言っていない。


言える訳がない。


俺はこの事を墓場まで持って行くつもりだ。


ただ、俺が不登校になった事を知った時、両親はひどく心配していた。

両親には凄く迷惑を掛けたと思っている。

そして、俺は両親の奨めでこの県立西田高校に転校する事になった。



ここでの俺は学園にいた頃とは違いよく笑うし、思ってる事もちゃんと言ってる。

友達も出来たし、自分のクラスである2組にもすぐに馴染めた。






ただ…俺に笑う事や、自分の気持ちを相手に伝える事を教えてくれた人物は此処にはいない。


それだけが唯一の気掛かりだ。


「黒田〜、お前バスケ部に入らない?お前ならタッパあるから、すぐレギュラーになれるよっ」


今、俺に話し掛けているのは隣の席の櫻井だ。

櫻井は、俺がこの学校に来てから一番始めに出来た友達だ。



「でも、もう二年の後半だろ?俺、鈍臭いから飲みこみも遅いし…」


俺はやんわりと櫻井の部活勧誘を断った。


「あ〜、勿体ねぇなぁ…俺だったらその長身を活かしまくってモテ街道を邁進するのに。」

「ばぁーか、黒田はお前と違ってスポーツやってなくても女子にモテてんだよっ」


俺の後ろの席の岸田が身を乗り出す。


「…まぁな。ムカつく事に学年の女子は皆黒田に夢中なんだよな。」

「え、そうなの?」

「その顔で何を抜かすっ!?」


俺は岸田に後ろから慣れないヘッドロックを食らう。


「ちょ、苦しい苦しい!」

「ふははっ、自覚が無い奴にはお仕置きだっ」

「ハハハッ、いいぞ〜岸田!男子を代表して黒田を制裁してやれ!」


俺が岸田の腕を弱々しく叩き、ギブアップの意図を示す。


「ちょっと、あんた達!黒田君に何て事してんのよっ」

「そうよ、黒田君が可哀相じゃないっ」

「…あぁん?俺たちの友情に首突っ込んでくんじゃねぇよ女子。」

「お前らキーキーうるせーからモテねぇんだぞっ!」

「ハァ〜っ!?あんた達に言われたくないわよ、このサル野郎っ!」








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