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本日…そんな咲山に放課後呼び出されて、今4度目となる告白を受けている。

今回は校舎裏みたいね。

律儀に行く私って本当優しいでしょ?
でも、今回はこっぴどく振ってやるの。私もう彼と関わりたくないし、言葉を交わす事も憂鬱だもの。







だから、これで全て終わらせてやるわ。







「…麹町。あのさ…俺、やっぱお前の事諦めきれない。俺にはお前しかいないんだ。俺、お前の事…好きなんだよ。」


…本当に、懲りない男ね。


「あんたの好きって一体何なの?」

「…は?」

「だから、あんたの好きって何?…百歩譲って私と付き合ったとして、あんたは私と何がしたいの?」

「そ、それは…放課後一緒に帰ったり、デートしたり…とか。」

「あんたって小学生?私は違うわ。私は好きな相手とキスもしたいし、セックスもしたい。」


咲山はセックスと聞いただけで、顔を赤らめた。


「あんたはさ、あたしに入れたい訳?」

「な、なにを…」

「何って…私に言わせる気?性器に決まってるじゃない。」


あぁ…今の私って全く美しくないわ。美からかけ離れてる。何でこんな下品な会話をしなくてはならないの。

…これも全部、咲山のせいよ。


咲山はというと、顔を赤らめたまま口を金魚の様にパクパクと開閉させている。なんて間抜けな面なの。

「そりゃ、男性だから入れたいわよね。…でも私は入れられたくないのよ。」

「…」

「絶対に嫌なの。」


私の声が1トーン下がると、咲山は急に真面目な顔をしだした。あんたには似合わないのよ、そんな顔。

「…どうぞ。おかしな女と思われても結構よ。でも仕方ないでしょ。私にはそういう欲求は無いのよ。だから、こんな狂った女だからあんたとは付き合えない。何度来ても同じ事よ。」

「…………何で、泣いてんだよ。」


泣いてなんかないのに咲山は可笑しな事を言う。


「入れる入れないがお前にとってそんなに重要な事なのか?」


重要に決まってんじゃない。じゃなきゃ私はこんなにも恋愛に苦労しない。



「…お前が望むなら、…俺はお前には入れないよ。俺の体、お前の好きにしていい。」

「私は美しい人が好きなの。…あんたなんか御免だわ。」

「…だったら、好きな相手に出来ない事…俺にすればいい。…いや、してくれよ。」


本当にこの不良は馬鹿だ。



なのに何で私は涙を溢れさせているのだろう。


「…あんた、私なんかのどこが好きなの。」

見た目をいくら着飾ったって…私は美しくはなれない。美しくない。


「…俺はお前の、女なのに強くて格好良くて、凛とした姿が好きだ。でも、弱い所も好きだ。…そんなお前が凄く俺は綺麗だと思う。」


咲山が近づい来て、いつの間にか私を抱きしめている。いつもなら汚らわしいと思うのに何だか今日は振り払う気になれない。


「…そんなお前に俺の事を、…好きになって欲しいんだ。」


本当にこの男は何て馬鹿なの。私に拒絶されてもこんなに真っ直ぐで、強くて…



…美しいとは、もしかしてこの事を言うかしら。



「離しなさい。」


私の一言に咲山の目は哀しみに揺れる。

そして、ゆっくりと私から腕を解いた。


「…あんたって凄いわね。」

「…え?」

「凄いわ…」


私は彼にそう告げて、背中を向けて歩き出す。


「お、おぃ。麹町っ」


咲山の慌てた声が背後から掛けられる。


「俺、諦めないからっ!!お前の事っ!!」


真っ直ぐな言葉が私の心に届く。

でも、今は振り返れない。振り返ったらまた泣いてしまいそうだから。

私は気高くありたい。私は格好良くありたい。これ以上格好悪い姿は見せられない。



私は美しくなりたい。





「…考えとく。」


小さくて聞こえなかったかも知れない。

それでも私は初めて咲山に今までと違った答えを出した。


そして、私は制服のスカートを靡かせて駆け出した。










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