迫る狂気




どうやらクラスでの俺の位置づけはホモに決まったらしい。

ただ、皆本気で言ってるんじゃなくて、冗談で俺をからかっているのだ。


いつもは不快に思うはずなのに、今は特に何とも思わない。


何でだろ?色を失った生活は、次第に色を取り戻していく。


今まで話したこともない様な奴に声を掛けられたりした。


何だこれは?


「瀬戸、聞いてる?」

「…あぁ。」

「何か気のない返事よね、いつも。」


今日もヒス女は俺の席にいる。

別に不快感は湧いて来ない。


「…なぁ。」

「え、何?」


俺から話し掛けるとヒス女はとても驚いているようだった。


「…お前名前何て言うの?」

「…は?何、今まで私の名前知らないで話してたの?」


そう言うと、ヒス女は怒りで戦慄く。


「クラス一緒になって何ヶ月経ったと思ってんのよ…」

「…ごめんね。」


俺はヒス女がヒステリーを起こすと思って備えてると、ヒス女は急に冷静になった。


「吉原!吉原 智子!覚えてよねっ」

「…吉原ね、吉原。」


俺は初めて高橋と会った時を思い出した。

あの時の会話はぎこちなくて、かなり気まずかった。


俺はククッと思い出し笑いをする。


「…何笑ってんの?」ヒス女、もとい吉原は嬉しそうに聞いてくる。


この女も、きっと嫌な奴では無かったんだな。


「…秘密。」

「何よー、ケチーっ」


それでも吉原は楽しそうだった。


「お前、俺の机に乗らなくなったな。」

「…止めろって言われたからね。」

「…へぇ。」


そこで始業のチャイムが鳴って、吉原は「じゃあね。」と手を振りながら自分の席へ戻っていった。


…あの女も不思議な奴だ。
こんなつまらない男に一々構うなんて。


「…吉原と何話してたんだ?」


後ろから高橋に声を掛けられる。


「いや、特に。」

「…あぁ、そぅ。」


高橋の声は元気なく小さかった。











何故か放課後、体育館裏で酒井君と会う事になった。


…俺、酒井君に何かしただろうか?


いつも高橋とは通学路でおち会っていたから、先に家で待っていてくれと伝えた。


「どうしたんだ?」

「いや、何か酒井君に呼び出されたんだよ。」


高橋は眉間に皺を寄せる。

さすがヤンキー。迫力が違う。小さい子供が見たら泣くな。


「どこに?」

「体育館裏。…俺、何かしたかなぁ。」


高橋は、俺の腕を引っ張って歩き出す。


「おぃっ、どこ行くんだよ」

「帰るんだよっ」








戻る

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -