リレー小説 | ナノ


二階建てでガラス張りのしゃれた感じの喫茶店。
二階の窓際の席にいるので、下を歩く人々がよく見える。
そんな喫茶店で、二人でテーブルを挟んで向かい合う。
もう私の頭の中には、包丁のことしか頭になかった。

「最近ですねぇ、洋出刃がほしいんですよぉ。
 あれ、頑丈じゃないですかぁ。」

「あー、洋出刃ですか。
 近くのお店で売ってるところありましたかね。」

「売ってないんですよぉ。
 鱧切りは売ってるんですけどねぇ。」

ちなみに、鱧切りとはハモ専用の特殊な包丁のことだ。
特殊な包丁のはずなのに普通に売ってるんですよねぇ、不思議ぃ。
というか、鱧切りは売ってるのに洋出刃が売ってないとかおかしい店なんですよねぇ。

「…てっさ包丁、とかぁ。
 ほしい包丁はいっぱいあるんですけどねぇ。」

本当にほしいものは手に入りやしないんですよねぇ。
……………本当にほしいもの?
あれ、折原さんは?
そういえば、折原さんは、どこ?
…折原さん、見失っちゃいました、ねぇ。
つい、包丁の話に夢中になっちゃいましたぁ。
反省、反省。
どこかに、折原さんいないかなぁ。
そう思って下を見下ろす。

「…みぃつけたぁ。」

偶然下を通っていたのは愛しの愛しの折原さん。
もう、これって運命ですよねぇ。
神様なんて信じていませんけどぉ、神様がめぐり合わせてくれたんですよねぇ。
神様がぁ、私に折原さんを殺せって言ってるんですよねぇ。
折原さん、折原さん、今から殺してあげますからねぇ。

「…今日は、これで失礼しますねぇ。
 またお会いできたら、よろしくお願いしますねぇ。」

いすから立ち上がり、相手の反応も気にしないまま一階へと降りていく。
中断してしまった追いかけっこですけど、再開の時間ですよぉ!
待っててくださいねぇ、折原さん!


自分の中の優先順位を大切に 


(折原さん、折原さん、待ってくださいよぉ)

(げっ、見つかった)