ミンウin異説
エアリスも参戦してます。
drown in blueの続きです。
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好きだと、フリオニールはそう言った。長い間避け続けた言葉だった。
この世界では選択肢は一つしかない。必要なかったのだ。初めから、要らなかったのかもしれない。私がそれを受け取れるほど強ければ、あるいは口に出来るほどに弱ければ。
お互い起きているのは知っていたが会話することもせず、手を握りあってただ光の訪れを待った。
朝が来て、陽光に包まれて、全てが許されたような気がした。
繋いでいた手は熱く、そこだけ妙な浮遊感を感じる。彼の温度と私の温度が混じりあって、ああこの熱があれば、きっと何処へでもいけるんだろう。
真っ直ぐに此方を見ていたフリオニールがゆっくりと口を開く。
「俺さ、あの時からずっと、嫌な夢をみてたんだ。」
勿論毎日じゃないし、内容も全然覚えてない。でも起きたら涙が出ててさ、どこかに手を伸ばしてるんだ。
「でもきっと、もう二度とみない。」
はっきりした口調だった。それは彼の確信。
掴んだのだ。もう得られないと思っていたそれを、彼はここで手に入れた。
「だからもしこの記憶を無くして元の世界に帰っても、きっとわかる」
ミンウにまた会えたこと。俺が好きだって言えたこと。ミンウが、泣いたことも。
「全部、わかるよ」
そう言って微笑む彼はあまりにも優しくて、清らかで、私はまた頭が痺れて、目蓋の裏が熱くなるのをどうにか堪えた。

「フリオニール、今からでも寝なさい」
君は確か今日偵察だったろう、皆が起きてくるまでまだ時間はある、さあ――
「ミンウは」
私は…
「もう少し、一緒に居ようよ」
自分の頬がふわりと弛んだのを感じながら、ただただ暖かいものに包まれていた。
「……仕方無いな」




ざわざわと皆がそれぞれのテントから出て広場へ集まってくる。もちろんいつも寝坊なメンバーはまだ夢の中に居るだろうが。
「おはようセシル、カイン。セシルにしては早いんじゃないか?」
「おはよう。あれ、ミンウとフリオニールは?まだなのかい?」
若干まだ癖の残る髪を必死に撫で付けるセシルと、乱れのない金髪をゆるく結わえたカインもその輪に加わる。
先に起きていた面々、バッツ、ティファ、エアリスが確かに…と顔を見合わせた。「二人ともいつも早いのにね」
「どうかしたのかな」
女性二人が首を傾げる。
「うーん。昨日フリオがミンウのこと思い出したばっかりだったからなー、積もる話もあったんじゃないか?」
バッツの言葉にそうかも、と皆昨日のフリオニールを思い出して微笑んだ。
「じゃああたしたち一応見てくる。ね、ティファ」
「うん。寝てたら起こさずに帰ってくる」

朝特有の少し冷たくて清々しい、生気に溢れた空気を心地よく肌に感じる。朝露が靴を濡らすのを楽しみながら、さくさくと草を踏みしめ二人のテントへ向かう。
「もしもーし」
入り口を開くと、踊り込んだ光の粒がさっと彼らを包み、淡く照らし出した。きらきらと光るそれが少し眩しくて、エアリスは目を細める。
結びあった指がほどけることはなく、向かい合って静かに眠る二つの横顔
「そっとしといてあげようか」
「そうだね」
思わず微笑が漏れるような、なんて柔らかい光景だろう。彼女はいつか教会で見たステンドグラスの光を思い出していた。

限られた時間の中で、それでも彼らは掴んだのだ。一度滑り落ちたそれを、今度こそ、離さないように。
纏う光はあたたかくて、彼らは全てに許されているのだった。

おやすみ、もう少しだけ
福音があなたたちをいだくまで
おやすみ、どうか、どうか穏やかに
彼らを包む光に、輝きが絶えませんように

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