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奇跡は待たない



※古の夢書きの血が騒いでしまった結果
※設定割とがばがば




人は、自分と違うものを恐れる。
それは考え方だったり、人種だったりと様々ではあるが、一番わかりやすいのは見た目である。

私達は先祖代々争いを嫌い、平和を好む種族。
争いよりも自由を愛し、隣人を愛し、自然を愛するような穏やかな種族だ。
私達の種族は背中に羽が生えて産まれてくる為、色んな呼び方があるが主に呼ばれているのは有翼人だ。
他にも空の一族、空人、などなど色んな名前が聞かれるが地上ではほぼほぼ伝説に等しい。
       
そもそも私達は下に居る地上の人間とは違い、空を住処とし、空で一生を終える。
天敵も少なく、風を読むことに長け、鳥などとは言葉を交わせる。
暮らし方はどっちかというと鳥に近いものがある。
そうなって産まれてくる理由はよく知らないが、明らかに地上にいる人間とは姿が異なるため見つかってしまったらと想像しただけでぞっとする。
その為下に降りることは禁じられており、好んで下に行こうとする者は誰一人としていなかった。

地上の人達は終わらない戦いを永遠と続けている。
終わりの見えないそれは平和を愛する私達にとっては地獄と変わりない。
関わらないほうが身のためだと教え込まれている。

なのに、どうして私は今地面に足をつけているのか。

何故こんなことになってしまったのかと、ここに来るまでの出来事が脳内を駆け巡る。
私はまだ小さい為親の介助なしではうまく飛べない。
いきなりの強風に大人一人なら耐えられたかも知れない…が、私が居たせいでうまく風に乗れなかったみたいだ。
その強風で吹き飛ばされた私は下に落ちてしまった。
運よく木が受け止めてくれて大きな怪我はないようだが…

「お前、どっから来たんだ?…って!な、なんだそれ!?」

「っ…!」

つい先程、地上の子供に見つかってしまった。
子供は私の背中を指差しながら心底驚いているようだった。
ああ、これからどうなるのだろう。
もうダメかも知れない。

「な、なんで生えて…って、お前よく見たら傷だらけだな!?
まさか空から落ちてきたのか!?」

なんか色々言われているようだが、耳に入らない。
ただただ漠然と死ぬんだ、と静かに絶望していた。

「お、おい…お前、話せるんだよ…な?
うーん、こいつどうしたらいいんだ?
流石に村に連れてったら大騒ぎだし…でも見て見ぬ振りもなぁ…」

「とりあえず!
おいお前、名前は?」

…?

「おい!…まさか喋れねぇのか?」

「…、ころさないの?」

「うわ喋った!
…って喋れるじゃねぇか!!」

「みせものごやとかにつれてくんじゃないの?」

「はぁ?
別にとってくいやしねぇーよ、てか名前!お前名前は!?」

「…ナマエ、」

「ナマエか!
俺は信!天下の大将軍になる男だ!」

これが、信との出会いだった。
信は変な子供で、物珍しいであろう私をどうこうするつもりはないらしく、そのまま落ちた所に放置していてくれた。
まあ、背中の翼については凄く聞かれたけど…。
それから二日ほどそこから動かずにいたが、三日目の朝方に両親が迎えがきてくれた。
まさか来てくれるとは思っていなかったから私は大泣きして空へと帰った。
地上に滞在していた二日間は、思っていたより怖くなくそれはきっと信のお陰なんだと彼にとても感謝した。
信は私が動かずにいた場所に二日とも様子を確認しに来てくれた。
少しだけ食べ物を分けてくれたり、傷もおぼつかない手で手当てしてくれた。
本当に感謝しかなかった。
私は地上に落ちたらもう戻ってこれないんだと思っていたから、地上にもいい人間はいるんだな、と何だか世界が広がったように感じた。
信にお礼を言えなかったのは残念だけど、いつか、必ずあの時のお礼を伝え、今度は私が彼を助けるんだと心に決めた。

それからというもの、私は信を助けようと機会を伺い鳥達に信の行動を追ってもらっていた。
彼は順調に天下の大将軍への道を辿っているようで、とても嬉しい反面、心配もしていた。
信はすごい。
彼には才能があって、それに引っ張られるように人が集まってくる。
助けなんて要らないんじゃないかと思う日も沢山あったが、どうしても彼にお礼を言いたいし、何より今度は私が助けたかった。

機会を待って、数年。
今日も鳥達から話を聞いてると、何やら一匹慌てた様子で割り込んできた。
話を聞くと、今信は小さいお城で篭城しつつ敵を退けている最中らしい。
しかも敵の数が圧倒的に多く、勝ち目がないかもしれないとの事。
これは急いで向かわねばなるまい。
急いで鳥達に指示を出し、信の元へと向かった。

サイの攻防戦、六日目夜。
三日と持たないと思われていたサイの城は、大王ことエイ政によってギリギリを凌いでいた。
極限状態の中なんとかその日も凌いだ秦国軍。
飛信隊も例外ではなく、皆死んだように床に倒れていた。
その中でもその日に出し尽くした信はほぼ意識がなく、エイ政が声を掛けるとようやく意識が戻った。

「でも明日…どうやって戦うの?」

「明日のことはいいんだよ!
…後は運を天に任せて戦うだけだ…だから今は大王様のお顔を、信や俺たちの顔をしっかりとまぶたに焼きつけとくんだ。」

「昴、奇跡って信じるか?」

「…信じる!」

「そうか…」

各々がいろんな思いを抱えて眠りにつこうとした時だった。
上空から大きな羽音が耳に入る。
次第にそれは大きくなり、人々は大いに恐怖した。

「なんだこの音!?」

信は最後の力を振り絞るように起き上がるとあたりを見渡す。
飛信隊もそれぞれ上空を仰ぐ。

「間に合った!!」

「うおっ!!」

女のものと思われる高い声と共に、強めの風が辺りに吹き渡った。
敵襲かと武器を構えるが、それよりも早く女が信の名前を呼ぶ。

「信!よかった生きてる!」

「お前…、」

「羽が生えてるぞこの女!!」

「何モンだテメェ!!」

「大王様!お逃げください!」

辺りは騒然とし、まるで昼間の戦場にいるかのように思えた。
ある者は武器を構え、ある者は王を守るように、ある者はポカンとしながら見覚えのある女を見ていた。

「待てお前ら落ち着け!!」

信が人一倍大きな声をあげると、辺りは少しだけ静かになった。
女は辺りの様子を伺うと、信に近く。

「信、久しぶり…って言っても覚えてないかなー?」

「お前…まさかナマエか!?」

見覚えがあった信はまさかと思いつつもあの時空から落ちてきたと思われる女を、うろ覚えだが記憶していた。

「信、この者と知り合いか?」

兵達に囲まれているエイ政は、皆が一番に聞きたいであろう質問を信に投げかけた。

「ああ…ちょっとな。てかなんでお前がここに…、」

もう会うことはないだろうと思っていた為、なんとも言えないような気持ちでナマエを見る。

「信、あの時助けてくれて本当にありがとう。
だから、今度は私の番。
助けに来たよ!」

やっと、君を助けられる。

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