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リヴァイと全部忘れた子



ふっ、と目が覚めた。

「…?」

ここは何処だろう?
見たこともない天井が視界に入り、起き上がって見る。
辺りを見回すがとんと覚えがない。
ふと横を見ると、窓から柔らかい光が差し込んでいた。

「ああ、綺麗。」

何故だろう、何もかもが分からない。
ここが何処で、何をする場所で、自分は誰なのかも。
何にも分からないのにどうしてこんなに心が軽いのだろう?

「今なら、何処にでも行ける気がする。」

窓を開け放って、そこから這い出るように外へと降り立った。
体がとても軽い。
寝ていたとは思えないくらいに気持ちがいい。

降り立った地面を蹴り、私はそのまま外へと繰り出していた。
草原を駆け回り、空を見上げては回り出す。
ああ、空気が美味しい。

「ー♪」

何の歌かも分からない曲を声に出しながら、飛んで跳ねて踊り出す。
体も心も何もかもが軽くて、このまま飛べてしまえそうな錯覚に落ちていた。

「ー♪ーーーー♪」


「ナマエ!!」

瞬間ぐっと肩を掴まれ振り向かされる。
誰だろう、と不思議に思っていると痛いくらいに抱きしめられてしまった。
いや体がみしみし言ってるから痛いくらいと言うよりは絞め殺されるかもしれない。

「………ナマエ、悪かった。」

その人は声の低さと力加減で男の人だと分かる。
ナマエ、とは私の名前でいいのだろうか?
何に謝っているのかは分からないが、私は今自分で驚くくらい何もかも忘れてしまっている。
そしてその事に対して何とも思わない自分がいる。

「ちょっとリヴァイ!何をそんなに慌てて…ってナマエ!?」

すると向こうの方から新たな声が聞こえてきた。
女の人か男の人かよく分からないが、目元につけていたゴーグルを外すと私を見てとても驚いた顔をする。
その人は私の顔を見ると慌ただしく近づいてきた。

「…よかった、起きたんだね。」

その人は私を見ながら悲しそうな顔でそう言った。
男の人は未だに私を絞め殺そうとしている。
…そろそろ骨が折れそう。

「ナマエさん!?」

「いつ起きたんですか!?」

男か女か分からない人の後ろにまだ人がいたらしい。
なんか人数が増えてきた。
私まだ駆け回りたいんだけどなぁ…

「ってかリヴァイそろそろ離してあげなよ!だいぶ痛そうだよ!?」

ゴーグルの人の鶴の一声でようやく私は男に人から解放された。
いやー痛かった…。
しかし男の人は私の肩から両手を離そうとはせず、私の目を覗き込んだ。

「ナマエ、」

再び名前らしきものを呼ばれる。
やはりどうやら私の名前らしい。
ようやく顔を見れたと思ったが、如何せん何にもぴんとこない。
絞め殺されるくらいに抱き締められたのだから大切な人か親族かと思ったが、ほんとに何にも見覚えがない。
…うーんまあどうでもいいか。
思い出さないってことはそのくらい忘れたかったって事だろう。

「…ナマエ?どうかしたか?」

何にも話さない事を変に思ったのか、不思議そうに尋ねてくる。

「あの、」

ようやっと声を出すと、集まっていた人の目が全て私に向けられた。

「どちら様でしょうか?」

……わあ、皆さん顔が凍りついてる。

「ナマエ、お前まさか…」

真正面にいるその人の顔が若干青い。
信じられないものでも見ているようだ。

「…ここが何処かもさっぱり何ですけど、私まだ駆け回りたいんでそういうの後にしてもらってもいいですか?」

そうきっぱりと告げて、私は男の人の手を振り払うと再度大地へと駆け出した。
その場に残された人達がちょっと気にもなったけど、全部面倒なんで後回しにしよう。
今はこの美味しい空気と、青々しい草原に身を委ねようと思う。

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