アレンに成り代わる
※初っぱなから生理ネタです。
※駄目な方は回れ右でお願いします。
※名前変換はなしです。
毎月当たり前の様に来るこいつらに、私は前世(昔)も苦しめられていた。
アレンに生まれてからも、性別、という壁がまたもや苦しめにきた。
しかし、この体に生まれてからはそこまで酷くもなく、量もそこまで多くなかった。
こいつらが来る数日前に起きる特有の眠気も、イライラも、その他上げるときりがないが、それらも特に起きる事もなく、腰も重くもないし頭も痛くない。
前世(昔)はそれらにさんざん苦しめられていた為、また同じ事が起きるんだろうとげんなりしていたが全くと言っていいほど何も起きないのでガッツポーズをしながら喜んだのを今でも覚えている。
気をつけている事と言えば、ズボンに漏れないようにする事くらいだろうか?
それくらい、アレンに生まれてからは体は快適だった。
だがしかし、その日は何故だか嫌な予感がしていた。
「…?」
始めは下腹部の違和感だった。
生まれてこのかた15年、大体この歳になると殆どの女子は大人に成る為に毎月痛みに耐えなければ成らない。
だが先ほども記した通り、私はこの体に成ってから痛み等は全く訪れなかった。
だからだろうか?
あの頃死ぬほど痛かった痛みは、すっかり忘れてしまっていた。
「アレーン!!やっちまえー!」
「神田なんかぼっこぼこにしちゃえー!!」
「いけっ!そこだ!!」
「俺らの仇をとってくれ!!」
黒の教団では今、ちょっとしたイベントが開かれていた。
参加は誰でも自由で、トーナメント戦の組み手が行われていた。
ルールは特に制限がなく、エクソシストは少し手加減しろ、くらいである。
優勝者には1つだけ叶えられる範囲で何でも願いが叶えられるという物だった。
まあ、イベントと言ってもいつもの組み手と大して変わりはない。
科学班はもちろん、その他エクソシスト以外は皆既に敗退している。
残るは私と神田のみだった。(リナリーは言わずもがなコムイさんが大反対したため参加自体していない)
手加減しろ、とルールにもあるが言わずもがな神田はそんな甘い事は一切しない為、神田にぼこぼこにされた人達は怒りながら野次を飛ばしている。
私はもちろん寸止めにしている。
しかし今の相手は神田なので、手加減は一切していない。(する気もない)
「どうしたモヤシ、少し息が上がってるぜ」
「うるっさいですよバ神田、少し埃が入っただけですよ」
かれこれもう一時間くらいか、神田も少しだけ息が上がっている。
私に至っては今日に限って何故か体が重いし、いつもだったらすぐ言い返すのに、神田の一言一言にいちいち癇に障る。
頭もくらくらしてきた。
「アレンッ!!」
ぼうっとしていたせいか、誰かの声で我に返るが時既に遅く、目の前には神田がいて、力一杯の蹴りを食らってしまった。
吹っ飛ばされた私は防御するのが精一杯で、壁に思いっきり打ち当たってしまった。
「ぐっ…!」
気持ち悪い、吐きそうだ。
体全体がだるいし、もう動きたくない。
「どうした、終わりか?まあ、女の体力なんかこんなもんか」
「っ…」
女。
神田のその一言に私は、一気に闇底につき落とされた。
女だから、女なんて、女なんか…
私が、もし、男だったら?
ちゃんとアレン・ウォーカーとして生まれてきたら?
私だって、好きで女に生まれたわけじゃない。
なんで女としてアレン・ウォーカーに生まれてしまったのか?
男として、生まれたかった…
悔しさとやるせなさと、全部がごちゃごちゃになって何かを吐きそうだ。
神田が動かない私を見て様子がおかしいと思ったのか、近づいてきた。
「…?おい、…っ」
「アレン!?」
周りがざわっ、と騒ぎ始めたと思ったら、私の頬に何かが伝った。
「うわっ、神田がアレンを泣かしたぞー!!」
「神田謝れよ!!」
「流石にさっきの蹴りは痛いだろうよー」
「「謝れー!!」」
「うっせえ刻むぞ!!!」
周りが騒ぎ始める中、私の涙は止まらず、ぼろぼろと後から後から流れ落ち続けるだけだった。
しかも泣いてると自覚したとたん、もう何もかもが止まらず声を上げて泣いてしまった。
「ふっ、…う、うわぁぁん!」
「わー!!アレンどうした!?」
「誰か婦長呼んでこい!!」
「泣くなーアレン!」
辺りは緊急自体が起きた並みに騒がしくなっていた。
「くそっ、なんなんだよ」
神田は吐き捨てるようにそう言ったが帰ろうとしない所を見ると少しだけ責任を感じているのかもしれない。(まあ、神田に限ってあり得ないと思うけど)
騒ぎの中、またもや1つの声が聞こえた。
「アレン!?一体どうしたんだ!?」
声の主はリーバーさんで、人をかき分けながら私の目の前でしゃがみ込んだ。
が、私自体も一体何がどうなっているのかさっぱり分かっていない。
確かに体中は先ほどの組み手で痛いが、原因はそこではないように感じた。
「どこか変なとこでも打ったか?」
違う、と私は首を振る。
リーバーさんは私の全体を見渡し、何かを考えるようなそぶりを見せるとそっと頬に手を当て目の下を引っ張った。
「っと、急に悪い。…ああ、そうか、やっぱり…」
何かを確信したように頷くリーバーさんに、訳が分からない私はまたそのまま静かに泣き始めた。
止めようにも何故か止まらないのだ。
「班長!アレンはどうしたんすか!?」
「アレーン!大丈夫か!?」
「打ち所が悪かったんじゃねえか!?」
「リーバー班長!」
「ああ、多分アレンは大丈夫だ。…だがちょっと貧血気味だから、医務室に運んでくるな」
そう言ったリーバーさんは私をひょいっと抱き上げる。
まあ所詮お姫様抱っこというやつである。
私はいきなりの事に驚いたがそれよりも抱き上げるという動作のせいで頭がぐらぐらして気持ち悪かった。
涙も涙で止まってはくれず、私はそのまま気持ち悪さを残して眠るように意識を閉じた。
「もうっ!!月の物が来てる女の子と組み手をするなんて何を考えているの!?」
「っち、俺がそんなことしるかよ…」
「知らなくても知ってても女の子を力一杯蹴るなんて!!」
「こいつはエクソシストだぞ!!」
「問答無用!!!」
「いっ…!!」
ぼんやりと意識を覚醒していると、隣でそんな怒鳴り声が聞こえてきた。
ここは、医務室か…。
「おっ、アレン!目が覚めたか!!」
「りーばーさん…?」
反対側から声がかかり、よく見るとそれは恐らく此処まで運んでくれたであろうリーバーさんが私を覗き込んでいた。
「気分はどうだ?」
そう言われれば先ほどの気持ち悪さも、腰の痛みもイライラも全くない。
これは、もしかして…
「全く!アレン、貴方は何を考えているの!?月の物が来ているのに組み手なんて!!!」
先ほどの怒鳴り声が近くで聞こえたと思ったらリーバーさんの反対側で婦長が鬼の形相をしながら怒っていた。
「あ、はははは…」
「笑っている場合じゃありません!!!反省してないでしょう!?貴方はまだ15歳なんだから色々とまだ不安定なのよ!?」
これでもかというほどの怒鳴り声を上げて婦長はそうお説教をしてくる。
その少し後ろでは神田がばつが悪そうにそっぽを向いている。
「これに懲りたら暫く安静にしてなさい!!」
そう言い残して婦長はまた違う患者さんの所へと行ってしまった。
…そうか、やはり生理だったか…。
今回は大丈夫だと思ったんだけどなぁ…
また、お前に苦しめられなきゃいけないのか…
憂鬱になりながら辺りを見回すと、腕には点滴がされていた。
そんなに貧血が酷かったのだろうか…?
「じゃあ、俺ももう戻るな」
そう言いながらリーバーさんも立ち上がった。
そういえば、なんでリーバーさんは私が生理だと分かったんだろうか…?
「色々とありがとうございました。…あの、リーバーさん」
「ん?」
「…なんで私が月の物が来てると分かったんですか?」
そう質問すると、リーバーさんはきょろきょろと視線を彷徨わせた後、少しだけ言いにくそうに口を開いた。
「…あー、前に本で少し読んだんだよ、それにお前、無意識かもしれないが腹に手を当ててたからな」
「え、本当ですか?」
「ああ…。まあ、早くよくなれよ。あいつらにはただの貧血だって説明しとくからさ」
「…本当に色々ありがとうございます助かります」
ぽん、と私の頭に手をおくと、リーバーさんは笑って戻って行った。
私ははあ、と1つため息を零すと、突っ立ったまま動かない神田に声をかけた。
「いつまでもそこに突っ立ってられると気が散るんですけど」
「っち、…俺は謝んねぇぞ。…大体、ちゃんと体調管理をしていないお前が悪い」
そう言った神田は後ろを向いてしまい、帰るのか出口へと向かって行った。
「…そうですね、今回ばかりは私が悪いです。大丈夫だと思っていたんですがまた、こいつに苦しめられるとは…」
「…また?」
去って行こうとする神田にそう声をかけてが何かが引っかかったのか足を止めこちらを振り向いた。
「いえ、なんでもないです」
「…………悪かった」
「…えっ?」
一瞬、聞き間違いかと神田を見ると、既に神田は立ち去った後だった。
「聞き間違い…ですよね…?」
あの神田が謝るなんて天地がひっくり返ってもあり得ない。
そう思い込んで私はもう一眠りしようと布団を引っ張り上げた。
余談であるが、私が医務室にいる間、神田は絶対零度の笑みを浮かべたリナリーにこってり絞られたとか絞られてないとか…
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