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アルスラーンに成り代わる



※アルスラーン成り代わり、転生トリップ
※女だと隠し、アルスラーン通りに振舞っている
※知識あり
※17話の神前決闘


とても、重かった
馬鹿だと思う
どうして、成りたいだなんて言えただろう?


「(重い…)」

この椅子に座ることすら重く感る
息をするのがとても億劫になる
もう逃げ出したい気持ちでいっぱいだ
私はただの高校生だったはずなのに、自分の欲の為にこの場所に来てしまった

「(アルスラーン、貴方は、とても重たいよ)」

自分が以下に愚かで浅はかだったか思い知らされる
場所を代わってもらって私はアルスラーンの代わりに王都を奪還しなくてはならない
それ以外のことなんてする暇が、ない

「(私は、本当に愚かだ)」

こんな小さい体で色んな人の命を背負っているこの体はさぞ息苦しくて生きにくかったでしょう
王と王妃の血を引いていなくてさぞ逃げ出したかったでしょう
それでも優しい貴方は、国の為、パルスの民の為、仲間の、為…王になることを決意した

「(貴方は、真の王だ)」

私には、とても達成できそうにない
女として貴方の代わりに生まれてしまった私が王になど、成れそうにもない
自分の欲だけの為に貴方の代わりなど勤まるはずがなかった

「(…ごめんなさい……アルスラーン)」



「ダリューン!!」

バキッィ!っという音と共に、ダリューンの兜が宙を舞った
折れた剣で相手の攻撃を寸でのとこでかわし、突き刺す
しかし相手は全く効いていないのか、その大きな足でダリューンの体を吹き飛ばした

「ダリュゥゥーン!!!」

分かってる分かってる分かってる
この神前決闘はダリューンの勝利のはずだ大丈夫、私は全部アルスラーンどうりにやってきた何も変えてなどいない
ダリューンが、勝つ…

「(なのに…)」

なんで、足が、声が、震えるんだろう

「(ダリューン、…ダリューン)」
         ・・・・・・
貴方が死んだら誰がアルスラーンを守ると言うの?
だめ、絶対に死んじゃだめ
お願い死なないで、お願い
私じゃなくていい、アルスラーンでいいから
何も言わないし喋らない隠して生きていくからお願い、神様

「(お願い…)」

「…聞いたことがある、あの男は鮫と同じだ、痛みを感じるということがないのだ」

嗚呼、ここはあのシーンか
このシーンは何回も見たから一門一句覚えている

「そんな人間がありうると?」

ファランギースがありえない、と言った顔で答える
…ラジェンドラ、私はこいつが嫌いだ
アルスラーンはこいつのことを怒りつつもきっと何とか仲良く出来ないかと思っているのだろう  
しかし私は前からこいつのことが嫌いだった
ダリューンを危険に晒し、さらには王座に座ることに協力してやったのに恩を仇で返すようなクズ野郎だ
しかもカリカーラ王から兄を許してやれ、と言われていたのにも関わらず結局打ち首にし城門に晒した
こんな男を何故アルスラーンは許したのだろう?
アルスラーンは許しても、私は、絶対に許さない

「貴方は!!そのことを知っていてダリューンを神前決闘の代理人に選んだのか!?」

「アルスラーン殿…」

「もしダリューンがあの怪物に殺されでもしたら…パルスの神々に誓ってあの怪物と貴方の首を並べてここの城門にかけてやる!!」

いや、そんなんじゃ足りない
お前の大切な人達に、お前の体の一部を送りつけてやる
そして髪の毛の一本もこの世に残してやるものか

「落ち着きなされ、パルスのお客人」

ふと、カリカーラ王が仲裁に入った

「ガーデーヴィがバハードルを選んだのはラジェンドラより後じゃお客人の部下は無双の勇者とか…ガーデービーとて考えあぐね、牢より解き放った
それほど敵から恐れられる部下を、信じておやりなされ…」

それも、そうだ
私は、何をしているんだ
勝つことは明白なのに、人間離れをした物を見て動揺してしまっていた
ダリューンは、勝つ
分かってすらいても、怖くて堪らないのだ
アルスラーンの一番の臣下であるダリューンが居なくなったらと思うと、私は、アルスラーンは…生きてはいけないだろう
そのくらい、ダリューンが必要なのだ

「(アルスラーンは、私なんかよりも、もっと不安で仕方がなかっただろう…)」

「今だ!!」

その時、ナルサスの声が隣で聞こえた
これは、勝利、という文字の合図だった

「(ダリューン…)」

短剣を隠し持っていたダリューンはバハードゥルの腕を掴み、その短剣を、喉元に突き刺した
我々の、勝利だった

「短剣、だと…っ!」

悔しそうに呟かれる声が響く

「それまで!!…ダリューンの、勝ち…即ち、ラジェンドラの勝利じゃ!」

カリカーラ王がそう告げた瞬間、辺りは歓声に包まれた
ダリューンも、ほっとしたのかこちらを振り返り一礼した

「ダリューン…」

「殿下!」

ほっとした私は膝から崩れ落ちる
よかった、本当に、よかった…

「認めん!認めんぞ!!」

ほっとしていたもの束の間、ガーデーヴィが非難の声を上げた
負けたのが相当悔しかったのだろう、あれこれと文句をつけ、終いには父であるカリカーラ王にまで剣を向けた

「親衛隊!ラジェンドラを殺せ!!」

「っ!王を御守りしろ!ガーデーヴィを討て!!」

…兄弟喧嘩が、始まった

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