04
パキ…
「っ!」
水を飲み終え、息をついたその瞬間後ろから何かを踏んだ音が聞こえた。
反射的に振り返った私の目に入ったのは金色の瞳だった。
「あ…。」
人が居たことに安心したがそれも一瞬で、その人の目はとても鋭く、私は恐怖で後退ってしまった。
その人は目を見開き、私を見ていた。
じわりじわりと恐怖が全身に回ってきた頃、その人は迷いもなく近づいてきた。
「ひっ…!」
ばしゃばしゃと水音を立ててまで湖の中に入ってくるその人の目はとても鋭い。
怖くなった私は涙目になりながら恐怖で動かない足を無理矢理動かしなんとかその人と距離をとる、が、その行動は呆気なく、ぐいっと手首を掴まれた。
「やっ!」
何かされると本能的に感じたのか、私はその手を振りほどく。
その時、何故か私の背中で大きな音がした。
ばさ、という音がしたと思ったら私の体は宙に浮いた。
「わっ!」
私は恐怖を抱いていたことも忘れ、無意識に目の前の人に手を伸ばす。
「や、やだ!」
その人も無意識か、意識的か、手を伸ばしていたので精一杯私も手を伸ばすがあと少しのところで届かなかった。
少しだけ掠った手のひらは硬くて温かく、久しぶりに感じる人のぬくもりだった。
だんだんと小さくなっていく金色の目を持つその人を私はいつまでも見ていた。
どこまで飛んだのだろうか?
あの湖をでて驚いたことは辺り一面海だったということだ。
月光が降り注ぎ、海に反射している。
幻想的な景色に私は魅せられた。
浮くということにも少しだけ慣れたようだ。
最初はいつ落ちるのか涙目になりながらはらはらしたが、背中にある翼の存在が少しだけ安心させた。
「ここは天国なのかな…?」
飛びながらそんなことを考えてばかりいる私。
ばさっ、と時折響く羽音が辺りに響いた。
地平線を真っ直ぐに飛んで行くと次第に暗闇が終わり、辺り一面は光に包まれ、私は目を細めた。
そんな中、前方に島みたいなのが見えてきたのを視界に捉える。
「島…?」
どんどん近づいて行くのと同時に体から力が抜けていくのを感じた。
ああ、このままじゃ海に落ちるな…と以外に冷静な頭で思いながら私の意識はそこで途切れた。
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