01
世の中の常識はわかっているつもりだった。
この小さな白い世界の中で生活していても、わかっているつもりだった。
治ることは分かっていたし、元気になったら、治ったら、と、その後の事ばかりを考えていた。
友達とどこに行こう?
何を食べて何を見て、どんな出会いをしてどんな恋をして…なのに、それなのに、私はこの世から消されてしまった。
ピー………。
この世からまた1人、その短い人生の幕を閉じた。
それはあまりにもあっけなくて、
気づいたら、湖の真ん中に座っていた。
「え…ここどこ…?」
周りは森で囲まれており、辺りを見回しても誰もいない。
人の気配もしない。
自分の周りを見てみると、真っ白いワンピースを着ている。
その周りには、私をまるで逃がさないとでもいうように棒のようなものが円を描くように刺さっており、棒には鎖が付いていてその先は私の手に繋がっている。
「なんで私繋がれてるの…?」
ガチャガチャと鎖を鳴らしてはみるが、到底千切れそうにもない。
鎖の動きに合わせてチャプチャプと水も揺れては鳴いている。
不思議と冷たくもなく、暖かくもない。
水の感じもまったくない。
鎖は意外と長くて歩き回ることができるようだ。
私は取り敢えず歩こうと思い腰をあげた。
円の外へと出ようとするが、何か透明な壁に遮られているようで、円の外から出られない。
ドンドンと叩いて大声で叫ぶ。
「助けてっ!!誰か!!!」
力の限り叫ぶが人が来る気配は全くない。
「やだ…っ!誰かっ!!お母さん!お父さん!!」
じわりと目に涙が浮かぶ。
その時、ふっと思い出した。
私、死んだんだ。
じゃあここが、天国なの?
「やだ…やだ、よぅ…」
こんな誰もいないとこが天国だというの?
こんな何もないところが…?
つぅ、と涙が頬の輪郭を伝った。
でも私は死んだんだ…。
もう、誰も助けてはくれない。
「ひっ…」
ゾッとした。
全身に鳥肌が立ち、血の気が引いた。
次第に体は震えてきて歯はガチガチと音が鳴る。
寒さからではなく、恐怖からだった。
「怖い…誰か…」
この透明の壁からは出られそうにない。
本能がそう告げていた。
ただただ、震えて泣くことしかできなかった。
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