必死に紡いだ2音の行方
name change



あぁ、これはどうすべきなんだろうか。


冬期講習から帰ってくると、家に忘れてしまっていた携帯電話が着信があったことを告げていた。

これ自体はおかしいところなどどこもない。
電話がかかってくることなんて日常茶飯事だ。

問題は、その相手。

(なんで、なんで山本くんが・・・・・!?)

着信履歴にあった名前は、"山本くん"。
時間もほんの30分前。

というか、山本くんが私に電話って・・・!


私はいわゆる片想いというやつをしている。
山本くんが好きで好きで仕方ないくせに、ちっとも声をかけられずにいた。
冬休みに入る少し前に、友達に急かされてなんとかアドレスを交換して、ちょこちょこメールするような仲だった。
そんな些細なことでも嬉しかったというのに、これは。

さぁ、どうするか。
かけ直すか、いやかけ直さないなんていう選択肢はないわけだけど、・・・・どうする。

手が少し震えてきた。
彼の声が聞きたい。
でも緊張してまともに話せる気がしない。

そんなことを考えて考えてうんうん唸っていると、手だけでなく携帯も震えた。

「うわぁっ!」

思わず驚いて変な声が出てしまった。
落ち着いて画面を見ると、"山本くん"の文字。

うわぁ、なにこれほんとどうしろっていうの。
今出たってまともに話せる気がしない絶対話せない。
だからといって無視すればきっとあれだ、大変だ。
何か用があるからかけてきてる。わかってる。
力になれることならなりたい。
いやそれにはまず出なきゃだめだ・・・・!
でも手が震えて出られない。絶対声も震えてるし。
あぁもう、お気に入りの歌手の曲さえ今はうっとうしい。

・・・・・仮に出なかったとして。
山本くんはどう思うだろうか。

そう考えると、ネガティブ思考がどんどん膨らんでいく。

(こうなったら・・・・・が、がんばれ自分!)

自分で自分にエールを送ってから、小さくよし、と言って通話ボタンを押した。

「・・・もしもし、」

「あー由詩か?悪いなーいきなり」

はははーと呑気そうに笑う山本くんの姿が目に浮かぶ。
・・・・やっぱり、好きだ。

「ううん、全然・・・それより、何かあった?」

声、震えてないかな・・・・
そう思いながらも、彼と話せているということが私は純粋に嬉しかった。

「あー・・・・えっ、となー・・・」

少し黙ったかと思うと、今度は逆に「なんでさっき、出なかったんだ?」と質問された。

「あ、ごめんごめん。冬期講習で・・・」

答えると、あー、と納得したような声。

「由詩、忙しいのな。いきなり電話して悪かったな」

「うん・・・・山本くん、さっきと同じこと、言ってるよ」

少し笑いを含んだ声でそう返すと、山本くんもまた笑った。
緊張もだいぶ、とけてきたみたいだ。

「悪い悪い・・・ちょっと、な」

「ちょっと?」

「だからな、あのー・・・」

「ん?」

「あー・・・ダメだな俺・・・」

「へ?な、何が?」

「やっぱりなー・・・難しいのなー・・・」

ふぅ、とため息をつく山本くん。
え、なに・・・なんかした私?

「あの、」

「由詩」

尋ねようとしたら、山本くんの真剣な声に制された。

「あのな・・・・大事なこと言うから、しっかり聞いてろよ」

「え、う、うん」

「俺、は・・・・・・」

沈黙が訪れる。
なんだか自然と背筋が伸びる気がした。


「・・・・・好き、だ」

「・・・・・・・・・」

「き、聞いてるか?」

「あ、うん・・・」

え、なになに、
好きって、え、

期待して、いいの?

「あの、えっと・・・そ、そういうこと・・・?」

「・・・・多分、そういうこと」

心臓がうるさすぎて山本くんの声がろくに聞こえない。
まさか、そんな、夢みたいな・・・

「返事は、いつでもいいから・・・考えてほしいんだ、ゆっくり・・・」

「や、山本くん」

ゆっくり考える、ってそんな必要ない。
まだ頭はついていかないけど、心はきみの想いを受け止めてる。

「えっと・・・・・悪いな、困らせて」

「ぜ、全然、困ってないっ・・・・」

こんなとき、気の利いたことを言えたらどんなにいいだろうか。

伝えなきゃ、伝えなきゃ、それで私の頭はいっぱいで。

「わ、私も・・・・好き・・・っ」

声が小さくなってしまったけど、伝わったかな。
山本くんは何も言わないから、不安になってきた。

「山本くん・・・・?」

「マジで・・・か?」

「・・・・、こんなこと、冗談で言うわけ・・・」

「だよな、そう・・・だよな」

安心したような、山本くんの声。
それと同時に、笑い声も聞こえてきて。

混乱していた頭がだんだん落ち着きを取り戻してきて、今起こったことがはっきりとわかってきた。

「な、なんで笑うの・・・!」

「悪い、嬉しくて」

「・・・・っ」

恥ずかしくて、でも嬉しくもあって、顔に熱が集まっているのがわかる。

「ま、その・・・これからよろしくな、由詩」

「・・・・うん、よろしく・・・!」

どきどきして、胸が苦しい。
でもたまらなく幸せ。

大好きな人と想いが通じ合うって、こんなにも嬉しいことなんだ。

あぁ、早く冬休み、終わればいいのに。





fin.



Dear由詩さま
リクエストありがとうございました。

久々の山本、書いてて楽しかったです・・・・!
ご希望にそえたかどうかはわかりませんが・・・^^;

私の趣味で申し訳ないのですが、電話で告白ってすきなんですよね、なんか(笑)

気に入っていただけるとめっちゃ喜びます(笑)

由詩さま、今年もEcho againをよろしくお願いします!

お持ち帰りは由詩さまのみOKです。






山本って聞いてなんだかビビッときて書いた話。
なんでビビッときたのかなぁ。←


今年初更新。
今年も亀更新ですがよろしくお願いいたします。



2013.1.5 まゆ


title:Largo


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