優しい嘘


あと一試合乗りきれば、優勝。

私は、皆におめでとうを言う準備をしながら、ハラハラと試合を眺めていた。

勝てたらいいな。
そうやって並んで話した山本くんが、今、ヒットを打って走り出す。

「やったっ!」

ここ最近、山本くんを見ると胸が高鳴るなんて話は、また別の機会に。
それよりも、試合だよね。


今、並盛と戦っている相手は県内屈指の強豪校。
そんな対戦相手に張り合える並盛は凄い。
油断大敵。それは分かってるよ。
けどつい、勝てるんじゃない?行けるんじゃない?なんて考えちゃう。

そんな心が神様に伝わったのかな。

二年、夏の大会。

あと一歩で、負けた。


****


「ごめんな」

「そんな…山本くんが謝ることないよ」


だって、山本くんはミスなんてしてない。
いつも通り戦って、今はまだ力及ばずだっただけなんだから。

だから、大丈夫だよ。
そう伝えたいのに声が出ない。

そんな私を見て山本くんが困ったように笑って、

「俺は大丈夫だから」

…困らせたいわけじゃないの。ごめん。
なのに、なんで涙なんか出てくるんだろう。


「白石、いつもありがとな」

「え?」

「マネージャーなんて大変だろ?朝早くから遅くまで付き合ってくれてほんと助かってる。ありがとな」

…何で今、私を労うの。

私なんか、全然役に立ててないよ。
試合後だって選手のメンタルを気にかけて、フォローしなきゃいけないのに。こうやって泣いてしまっている。

本当に辛いのは選手。マネージャーは笑わなきゃ。
それなのに…

ごめん、山本くん。ごめん。


「来年、絶対勝つからさ」

山本くんの優しい声を聞きながら、こくりと頷く。
すると、スッと私の方に手が伸びてきて。

ぽんぽん。
軽く頭を撫でて、自分の被っていた帽子を私に被せた。


「だから、泣くなよ。な?」


それを聞いた途端、更に涙が溢れてきちゃって。
同時に、山本くんの余裕のなさにも気付いた。

大丈夫だと言って笑う山本くんの顔の、その目からは涙が零れていて。

やっぱり、私のために吐かれた嘘なんだなぁ、って。
温かくて 優しい、山本くんらしい嘘。

そんな嘘、いいよ。

出来ることなら、気が付きたくなかった。

だって、だって。

その優しさを感じる度、私は 心が揺れ動いて、
恋に落ちてしまいそうになるんだよ。





****
ちょっと文章の書き方変えてみました。
どうでしょうか?(・ω・;)ヾ

え?山本くんて青春の塊ですよね?




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