片想いタイムリミット


好機が来た。
人生の半分の運を使ったんじゃないの、と思う程の、それはそれは素晴らしい形で。

今の現状。
HRを終えて、帰りの準備をする最中。
窓側の、一番後ろの席に座る山本君。
その後ろには私のロッカー。

山本君と私が今、二人きりで話している!

なぜ会話に至ったのかはあまり覚えてないけれど、こんなシチュエーション、嬉しくない筈がなかった。

皆は席に座り、ガヤガヤとしていて、山本君が椅子に横に腰掛け 首だけ後ろを向く。

私は荷物を抱えながら、ドキドキと五月蝿い心臓の音をどうにかしなくちゃ、と考えていた。


「色紙でいいんじゃね?」
「でもちょっとありきたりじゃない?」
「んー、あと、歌とか…」
「ああ、いいね。皆ちゃんと音覚えてこれるかな」
「なんとかなるって!」


三月上旬。もうすぐ定年を迎える先生への一年の贈り物として、何がいいか。
たったそれだけの何となく業務的で、他愛もない会話だったけれど、私には幸せで、幸せで。

好きの気持ちが今にも溢れそうだった。

終わらないで。この時間をずっと終わらせないで。

ぽかぽかとした日だまりの下、山本君を見上げる。
逆光で目が痛い。
眩しそうに目を細める私を見て、彼は柔らかい表情で笑う。


「今日は、良い天気なのな」
「え?」
「暖かくて、気持ちいくね?」
「…そうだねえ」
「な。」


私はやっぱり山本君が好きだ。
じんわりと、そう、感じた。

何度も ひとり、声にしてみたけれど、それは彼の耳には届かなかった、好きの言葉。今、勇気を出さなければ。今、変わらなければ。
目の前に山本君がいるんだよ、
繰り返し心に言い聞かせて、何回、経っただろう。
何回、後悔しただろう。

昔も今も、グラウンドを走る彼を目で追い、耳で追い、心で追っている。
今、手を延ばさなければ、これから先ずっと言えないと、彼を見てそう思った。


「あ、あの…っ」

「ん?」


この気持ちを伝えなきゃ。
苦く、苦く、そしてとても甘美なこの気持ち。
いつか、

それがいつか、誇らしいモノになりますように。

そう祈り、
私は口を開いた。




(や、山本君)
(あの、えと、…んー…)
(ん?どうかしたか?)
(っ!な、何でもない!)


****
お借りしました!
たとえば僕が


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