いつの間にか


最初はなんとも思ってなかった。


…最初は…。


「はぁ〜…」

俺は本当にバカだ…。
音楽室で俺、獄寺隼人はため息をつく。
考えるのはさっきまで一緒にいたクラスメート 白石七海のこと。
文化祭の合唱でピアノ伴奏になった彼女は自信がないらしい。
そこでお優しい十代目の提案で俺が教えることになった。
十代目の頼みだからということもあったが俺は白石のことが最近いつも気になってしかたがなかった。
目が合うだけで顔が熱くなって、ドキドキと心臓がうるさくなる。アイツが他の男と話しているだけでイライラする。
ピアノを教えていても彼女の真剣な姿や笑顔にドキッとする。

だが、最近 白石はおかしかった。練習中ボーッとしていてミスも多い。
そのせいか表情が暗い。そんな彼女を見ていられなくて、つい怒鳴ってしまった。


「いつまでもそうやってメソメソしてんじゃねぇよ!!」

するといつも笑顔の白石の目に涙がたまっていた。


「お、おい…白石『ごめんなさい…』あっ おい!!」

白石は音楽室を出ていってしまった。


アイツの辛そうな顔を見ると胸がモヤモヤする…。
なんだろう…この気持ち…。
白石を探しながら考えていると俺は屋上に来ていた。
そこにアイツはいた。白石は俺に気づいていないようだった。


『やっぱ、嫌われてるよなぁ〜…、そりゃそうだよね…あたしのこと見てくれるわけないよね…怒られちゃったし…』

嫌ってる? 俺が白石のことを…?
そんなこと思ってない…むしろ俺は…
そう思って俺はハッとした。そうだ、俺は…俺は…
白石に近づき、後ろから抱きしめる。


『きゃっ…って獄寺く「好きだ…」…えっ?」

そう俺は白石のことが好きなんだ…。
コイツを見てドキドキするのも顔が熱くなるのも 全部、全部俺がコイツのことを…

「好きだ…俺は白石が好きだ」

俺はそう言うと正面からもう一度抱きしめた。

『う…嘘…』

白石は俺の言ってることを信じていないようだった。
顔を真っ赤に染めて 嘘…と繰り返している。
そんな白石がいとしく思えて仕方なかった。


『私…ずっと嫌われてると思ってた。ピアノ教えてもらっても怒られちゃうし…
…ずっと…ずっと…私は…獄寺くんのこと見てたのに…』

「っ…それって…///」

『私も…私も獄寺くんが…獄寺くんのことが大好きです…///』

そう言うと白石は俺の胸にうずめた。
…なんなんだ、この可愛い生き物は…////

「付き合ってくれるよな…?」

『っ…よ、よろしくお願いします…////』

耳まで真っ赤にする白石が可愛くて、さっきよりも強く腕の中に閉じ込める。

『…っ…ごっ 獄で「隼人…」…えっ?』

「隼人って呼べよ…七海…///」

『は…隼人…?///』

「いい子だ…」

俺は頑張ったご褒美と言って七海にキスをした。
優しい触れるだけのキス。
唇が離れると耳まで真っ赤に染めた七海がいた。

それを見て顔が熱くなるのを感じながら

「音楽室戻るぞ…///」

をぶっきらぼうに言った。

『あっ…はい…って ちょっとおいてかないでよ!!』

「テメーがおせーんだろーが はやくしろよ///」

熱くなった顔を見られたくなくて俺は急いで屋上を出た。


『待ってってば!!』

そう言って七海は俺の手をつかんだ。

「なんだ…っ…!!///」

振り向いた瞬間頬にキスされた。

「な……っ////」


『さっきのお返し!!///』

そう言って七海は赤くなりながらも嬉しそうに微笑んだ。










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