kiss me.


告白は私からだった。

同じファミリーで背中を任せて戦った、信頼の出来る仲間。
次第にプライベートでも一緒に行動することが多くなって、そんな彼にいつしか恋をしていた。

ロマーリオやリボーンさんにいっぱい相談して、いっぱい手伝ってもらって今に至る。両思いだった、というのは告白後ディーノさんから聞いたんだけど、
それを踏まえて相談に乗ってくれていたロマーリオたちには本当感謝している。
ありがとう。

私って幸せ者なんだなぁ。
それくらい分かってるんだけどね。

でも、それでもさ…

折角ディーノさんとカップルになれたんだから、
抱き締めてもらったりだとか、キスだとか…したくなるよ。

kiss me.

「――つまり、
七海はカップルらしいことがしたいんだな?」

「そ、そうなの…」

実は私、ディーノさんと手を繋ぐ以上のことをしたことがない。
どう切り出せばいいのかも分かんなくて、つい照れてしまう。
あまりにも関係が普通なもんだから、嫌われてるのかと思ったこともあった。というか今もそう感じることもある。
ああ、なんていうか…こう、ね?
いちゃいちゃしたい。

これが俗に言う、欲求不満ってやつらしい。


「ロマーリオはどう思う…?」

仕事の合間にこうやって仲間たちに相談をすると、大抵
「お前らはこのままでも良いと思うぜ!」とか言って流されるけど、今日は違った。

「もう付き合って半年だろ? 結婚もあるしなぁ。何とかしなきゃダメだよな」
「けけけ結婚!?」
「あ、しないのか?」
「する予定はないけど……いずれしたいな、とか」

もごもごとそれを口にすると、満足げに 「だろう?」 と笑うロマーリオ。

「しかし、半年も付き合ってて手を繋ぐまでって異常じゃないか?」

二十代にもなってそんな中学生みたいな付き合いお前らくらいだぜ、と付け加えられる。結構刺さる。

「何だか言いそびれて、ずるずるとなっちゃって」
「でも言えばキスなり何なり望むことしてくれると思うぜ」
「そうなんだろうけどさー…
照れるというか、仕事とプライベートの距離感が掴めないというか」
「成程な」

頷きながら、唸る。
こうして行き詰まったとき、ロマーリオにはいつも助言を貰っている。
ディーノさんと付き合うまでも、ロマーリオがこうして背中を押してくれた。

…でもディーノさんは、どうなんだろう。
私といて楽しいのかな。

「私と、別れたいのかな…」
「――だとよ、ボス。七海はこう言ってるぜ。どうなんだ?」
「えっ?」

ガタガタッ、という物音が聞こえて、ゆっくりと扉が開く。

「き、気付いてたのかロマーリオ…」
「ボスと何年一緒にいると思ってんだ」

「あ、れ? …ディ、ディーノさん!?」

申し訳なさそうに、苦笑いをしながら出てくるディーノさん。
目を白黒とさせて口をあんぐりと開ける。

「いやー…悪い。帰ってきたら気になる話題が聞こえてきて、つい」
「盗み聞きしちまったんだな。全くうちのボスは」

目を細めて大きく笑うロマーリオ。
何でそんなに楽しそうなの…!
恨めしげに視線を送れば、何を勘違いしたのか 「邪魔者は退散するぜ」 と出ていってしまった。

そんな、待って! わ…私どうすれば…!



気まずい空気が流れる。
こちらの様子を伺って、黙り込んだディーノさんを軽く睨む。

「う…悪かったよ、盗み聞きなんてして」

「…違いますよ。そのくらいで怒りはしません。
ちょっと無いな、とは思うけど」

「え…七海?」

「…私ずっと寂しかったんですよ。何で手ぇ出してくれないのって」
「!!」

「ディーノさんにとって私は、1人の女性じゃなくただの部下なんですか」

真っ直ぐ、ディーノさんの瞳を射抜く。
額から頬へ水滴が伝うのが見えた。

「そんな訳ねーだろ…」

ぽそりと呟いて顔を歪ませる。
―――そして、
気付けば私は、ディーノさんの腕の中にいた。


「手を出したら七海を、傷付けちまうんじゃないか、って怖かったんだ。
どこまで手を出していいのか、ずっと不安だった」

「……へなちょこ。そんなの、伝わんないよ」

ぎゅうっと抱き締められる。石鹸のような優しい匂いが鼻について目を細めた。…いい匂い。

「心配かけた、ごめんな」
「…やだ」
「なっ!?」

「今までの分も、いっぱい愛してくれなきゃ嫌」

「……七海っ! そんな可愛いこと…! もちろんだ」


再びきつく抱き締められて、背中に腕を回してみる。
どちらからとなく自然と引き寄せられ、唇を重ねた。

ぷっ、と私が吹き出せば、釣られたようにディーノさんも吹き出す。
二人笑い合う。


やっぱり幸せだなぁ。
こんな時間がとても好き。
へなちょこだけど、優しい彼が一番好き。

扉の奥からロマーリオさんのくしゃみが聞こえた。




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おじさん万歳\(^o^)/
ディーノさん誕生日おめでとう!!








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