Loooove!


私は、本当の恋を知らない。
俗に言う初恋だとか一目惚れだとか、そういった類いのものを知らないのだ。
知りたいとは思う。
私だって華の17歳、未知の世界には興味津々なのだから。

だから、手を出してしまったんだ。
あの鬼の作戦隊長、s.スクアーロに。



「隊長隊長隊長隊長!」

「ゲッまたテメェかぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛あ゛!」

「ご機嫌いかがですか!」

「いかがも何もたった今悪くなったぞぉ!」

「不憫ですね!」


ニコニコと効果音がしそうな程笑顔を浮かべて上司であるスクアーロ隊長に飛び付く。
背中にべっとりと貼り付けば、鬱陶しそうに首を振った。
え、ちょ、痛い痛い痛い痛い髪が刺さる!

パッと離れれば、私を見て深く溜め息をついた。


「ったく何でテメェは見境もなく人に抱き付きにくんだよ」

「失敬ですね!スクアーロ隊長にだけですよ!」

「質悪ィぞぉ゛ぉ゛!」


チッ悪ガキがぁ… そう言ってさっさと廊下を進んでいってしまう隊長。
あーもうつれないよ!


「待ってくださいよ!もう少しお話しましょうよー」

「仕事帰りだって見えねぇのか」

「私が報告に行きますからー!」

「現場見てねーだろが」

「……勘で!」

「勘かよ……チッ。
さっさと話せ。用件終わらせろぉ」


バリバリと頭を掻いて、談話室のソファに豪快に座る。
結局こうやって話を聞いてくれるんだから、隊長は優しい。
ずっと絡まれるのが面倒なだけかもしれないけど。


「はい、あのですね!隊長に教えて頂きたいことがありまして」

「何だぁ?」

「胸キュン、とは何ですか!?」


ブハッと噎せる隊長。
目をこれでもかってくらい見開く隊長を見ながら、口を動かし続ける。


「私、恋をしたことがないんですよ。恋愛ってよく分かんないんです。一目惚れとか言いますよね、どういうことですか?甘酸っぱい初恋なんてのも不思議に思うんです。何味なんですか?というか味があるんですか?ファーストキスはレモンの味だなんて聞きますけどどんな化学反応が起きてるんでしょうか。それと、」

「ちょ、おい、待て」


隊長の制止を聞いて一端口を動かすのを止めた。
きょとん、とする私を見て再び深い溜め息を吐いた。


「まぁ、興味があるのは勝手だが…何で俺に聞くんだぁ」

「経験豊富そうじゃないですか。それに…」

「それに?」

「スクアーロ隊長が一番頼りになるし、一緒に居て楽しいからです」

「……そうかぁ」


変な顔をして私から目を逸らす。
少し気まずそうに頷いた。
何かよく分からないけど、納得してくれたみたいだ。

「で、どうなんですか?」

「あ゛?」

「胸キュンだとかレモンの味だとか教えてください」

「…後半はあれだろ、ただの迷信だろぉ」

「そ、そうなんですか!?」

「…まぁ」


そうだったのか…知らなかった…
幼い頃のサンタさんの存在並みに信じきってた。
ビックリして口を開けていると、スクアーロ隊長がさも当たり前のように呟く。


「つかあれだろぉ。実際に体験してこりゃいい話じゃねーか」

「はぁぁ!? わわわ私チキンハートなんですよ!そんなはしたない真似出来ませんから!」

「いきなり飛び付いてくるヤツが何言ってんだぁ゛!」


勢いで置いてあった灰皿を投げ付けられた。
痛い!ボスかあんたは!


「うぅ、だってだって…私の相手してくれる人なんてなかなか居ないだろうし。
隊長に聞けた方が手っ取り早いし、何か楽しいし」

「ハッ」


グダグダうっせぇなぁ゛。
立ち上がり、私を引き寄せた。

そして私の腰と頭を支え、唇に自身のそれを押し付ける。


「っ隊…!?」

「これで満足かぁ゛?」


ニヤリと笑って私に囁く。
どうにもこうにも頭が回らなくて、ただただ顔が熱い。

胸がギュウウと締め付けられて、苦しい。


「こ、これが胸キュンてやつですか?」

「さぁなぁ。レモン味はしたかぁ゛?」

「む、無味です……」


顔の熱が何故か心地好く、暫くはこのままで居たいと思った。

楽しげに笑って私に背を向ける隊長は何だか生き生きとしていて、姿は変わらない筈なのに急に輝いて見え始めたのは私の目の問題なのだろうか。それとも。







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最近色んな方向に愛が分散してます。
なんか書く毎に書き方が変わってるような気がします( ̄ω ̄;)


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