最愛。


「獄寺くん、獄寺くん!お昼一緒に食べよ!」

「チッ誰がテメーなんかと」

「あれおかしいな前が霞んでよく見えない」

「頭悪い上に目も悪りーのか?」

「あれ?私達付き合ってるんだよね?」


ああ、ツンデレというものですね分かります。




無理矢理引っ張って来て15分。ただ今屋上。
作ってきたお弁当を押し付けて様子を見る。

「ど、どう?」

「不味い。」

「……そっか。」


拒否し続けたがしつこい私に観念したのかようやく食べて貰うことが出来た…が。
…凄い無愛想。なんか、こう、シュンとする。


沢田くんと山本くんは私に気を遣って獄寺くんを送り出してくれたけど、獄寺くんからしたらあの二人と一緒に居たかったのかなやっぱり。(正しくは沢田くんと?)
あんなに慕ってる沢田くんにあっさり送り出されて複雑な部分もあるんだろうな。


「ごめんね。教室戻る?」

「別に」

ムスッとして私から顔を剃らす。
ああああ怒ってらっしゃる。そして今更私に気を遣われて余計怒ってらっしゃる!
何尻様かあなたは。

黙々と作ってきたお弁当を口に運ぶ獄寺くん。
形の崩れただし巻きが獄寺くんによって消えていく。

何だかんだ言って…いつも、作ってきた分は食べてくれるんだよね。
それが嬉しくて何度失敗してもまた作ってきてしまう。
いつも怒られてばっかりだけど、私は獄寺くんのそんな優しいところが好きだ。


「あ、そういえば。相撲大会はどうだった!?」

「はっ!?」

「最近特訓とかで沢田くん達と休んでたよね」


ギクリと肩を揺らす獄寺くん。少し頬が赤い。
何か可愛い。
興味津々に聞くと、獄寺くんは眉間に皺を寄せながら少し考え込む。そして少し戸惑ったように、


「勝った?」

「お、おう。まーな」


山本くんは置いといて、沢田くんに獄寺くんは絶対スポーツはやらないと思ってたのに。しかも、相撲。想像つかない。

何か知らない所で頑張ってて嬉しいような、寂しいような?
いやいや嬉しいに決まってる!


「良かったね。おめでと!そして、お疲れ様!」

「……サンキュ」


わしゃわしゃと頭を撫でると「っ…ガキ扱いすんじゃねぇ!」って怒られた。
い、今ならいいと思ったのに!
それでも目を細めて気持ち良さそうにするから、改めて、丁寧に撫で続ける。


「凄いね」

「何が」

「獄寺くんは何でも出来ちゃうし」

「んだよ急に」

「ん?ううん、何でもない。何でもないんだけど…ただ、いや…」

「気になるじゃねーか。言えよ」

「……やっぱりちょっと寂しいかなーって。」


薄く見開かれた瞳の中で、私と目が合う。
悲しいのか、呆れてるのか、何なのかよく分からない表情。
獄寺くんは押し黙り、私を見つめる。


「獄寺くん?」

「………」

「…ごっきゅん?」

「誰がごっきゅんだ!」


そして、「チッ」と短く舌打ちをして私の腕を引っ張り引き寄せる。
いつの間にか私は抱き締められる体勢にいた。何という超展開。
驚いたけど、もぞもぞと獄寺くんの肩に顔を埋めれば、煙草の匂いが鼻についた。獄寺くんの匂いだ。


「ったく」

「うん」

溜め息を吐きながら、ぐっと顔を自身の肩に押し付けられる。
私を安心させるように力強く抱き締めてくれる。
力の限り、少し痛いくらいに。


「テメーなんかと付き合ってやる物好きはいねぇよ。ブスだし、料理は下手だし」

「え…?」

「……だから、黙って俺に着いてこればいいんだっつの!」


自暴自棄のように言い放ったそれは、人にはキツイ言葉でも、私には優しい愛の言葉であって。


「……了解」


遠回りだけど、ちゃんと欲しいものはくれる。そんな獄寺くんが最愛なんだよ。ねぇ、獄寺くん。




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ただ罵られたかっただけなのです。



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