ハートブレイカー「ロックンロォォォール!」
ジャーン、と鳴り響かせて締める。ギターを持つ手が熱い。よしゃ、決まった。
「七海、ウルサイ」
「そう?」
ヘッドフォンを耳から外して私の方向へ振り返る。
正ちゃんは口を尖らせて私を見る。Tシャツ短パン一つに纏められた髪。彼氏の前で何ててきとーな格好、とかは思わない。
そんなnot魅力的な私を見つめる正ちゃんは一体どう思っているのか。
「七海ってさ、何で休日になるとギター鳴らしにくるの?」
「えー? だって暇なんだもん」
「つまり、暇潰し?」
「イエス」
「ふーん」
私の返答に薄く反応して再びヘッドフォンをする。
音漏れして聞こえてくるのは私も大好きなブラペパの曲。正ちゃんはいつもこの曲を聞いている。何か特別な思い入れがあるのか知らないけど、この曲以外を聞いているのを私は一度も見たことがない。
そこまで好きなのか……、彼女を置いてまで?
なんて珍しく可愛いことを考えてみたけど、口から砂糖を吐けそうだったから考えるのを止めた。勿論、伝えはしない。わだかまりは消えないけれど私には似合わないということは分かっていたので良い。
再びジャカジャカと鳴らしていると、正ちゃんが振り返る。デジャヴ。
「七海はさ、」
「うん?」
「僕と居て……いや、何でもない」
言い掛けた言葉を飲み込む正ちゃん。
僕と居て、……何?
目を伏せて視線を合わそうとしない。
「え、なんて?」
「何でもないよ」
気になって覗き込むと顔を赤らめて頭を小突かれた。割と痛い。
「とにかく!気にしなくていいから!」
「……そう?」
「そうだよ!」
再びヘッドフォンで耳を塞いでしまった正ちゃん。何か誤魔化されちゃったけどいいや。
別に聞こえてないだろうし、と思い口を滑らす。
「もう少し可愛くなるからさ、私に構えこのやろー。正ちゃんはいっつも消極的」
ぼそりと呟くと、正ちゃんの背中が揺れた…気がした。
「つまり、ハートブレイクだよ!」
ジャーン、と鳴らす。手が熱い。何でだろう、顔が火照る。
あれ、そういえば、音漏れしてないな。
ハートブレイカー
(今、七海…っ)(今のは完全に卑怯だよ…)
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寂しかった、と遠回しに伝えていると受け取ってください
続き書きたい、って言ってみるけど多分書かないと思います。
「確かに恋だった」様からお借りしました。
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