キスから始まる恋物語『行きます!!』
長い髪をひとつにまとめ、私は目を閉じる。
意識を集中させ、ゆっくりと息を吐く。
『ハッ!!』
声と共に足を高くあげる。
ビュッと空気を切る音。
「音が鳴ってはいけませんよ、七海」
『はい!!』
穏やかな声で私に注意するのは風お師匠様。
優しくて、かっこよくて、私の憧れの人だ。
今日も私を朝からずっと指導をしてくれている。
「そろそろ終わりにしましょうか」
時間がたつのは本当に早くて、気がつくともう日が暮れて少し暗くなっていた。
『大変!!早く帰って夕飯作らなきゃ!!』
「足元に気を付けてください。あんまり慌てると転びますよ。」
クスクスと楽しそうに笑いながら注意するお師匠様。
最近私の前でもこうして笑うようになってくれた。
もともと笑ってくれなかったわけではないけど、ちょっとよそよそしかったと言うかなんというか…
まるであまり気を許していない人に見せる笑顔だった。
『なっ!!///なんでそんなに笑うんですか!!?///』
「すみません…。七海はとても表情豊かなので見ていると可笑しくて…」
そんなに申し訳なさそうな顔をされると、これ以上怒れないじゃないですか!!!
それに笑っているお師匠様はとっても綺麗で…顔が熱い///。
『もう…///』
顔が赤いのを見られたくなくて、ついつい早足になってしまう。
だから足元が悪いのにも気づかなかった。
「七海!?」
『えっ…??』
お師匠様の声が聞こえた時には私の体は傾いていた。
『わぁ!!』
バランスがとれず、倒れることを覚悟し、目を閉じる。
…………あれ??
来ると思っていた痛みはなく、なにか温かいものに包まれている。
そして唇に柔らかい温もりとよく知ってる香り。
ゆっくり目を開けると目の前にお師匠様の顔が…。
『ごごごごめんなさいぃぃ!!!///』
私は慌てて離れると頭を下げる。
私のばか!!転んだ拍子にお師匠にキ、キスしちゃうなんて…。
「七海…」
お師匠様が私の名前を呼ぶ。
もしかして怒らせちゃったかな…??
その時…
「…すみません」
『え??…っ!!?///』
気がつくと私はお師匠様の腕の中にいた。
『あ、あの…お師匠さ「好きです」…へ???///』
「私は…貴女のことが…」
好きなんです…とお師匠様は繰り返す。
え…??嘘でしょ…??
お師匠様が私のこと…??
「いけないことなのは分かっています。ですが…」
お師匠様は私を強く抱き締めると顔を近づけて言った。
もう一度キスしていいですか??キスから始まる恋物語もあるのかも知れない。
私が頷くと彼は優しい優しいキスをくれました。
prev|next