幸せは此処に


※十年後、夫婦


ただいま、と疲れて帰ってきたバジルにお帰りなさいを言って迎え入れる。
今日は明らかに疲れてるなぁ。
いつもならしっかり揃えて隅に寄せる靴も、今日は爪先の向きがバラバラとし雑に置かれている。
お仕事お疲れ様、と心の中でお礼を言ってさっと靴を揃えた。

「もうご飯食べる?」

ネクタイを緩めてソファにもたれるバジルに問いかけた。
バジルはちらりとこちらに視線をやり、ふわりと笑って口を開く。

「拙者、七海殿が食べたいです」

「もう…。だいぶ疲れてるみたいだね?」

「七海殿ー」

腕を広げるので、困ったように笑ってバジルの膝に座った。
ぽすんとバジルの腕の中に収まる。

「七海殿はいい匂いがしますね」

「バジルもだよ」

「…拙者は汗の匂いしかしませんよ?」

耳元で囁かれる疲弊した声を聞いて、

「いつもありがとね。お疲れ様」

とにっこりと笑い掛ける。くすぐったそうに目を細めて笑い返すバジル。
頭に手を伸ばし、よしよしと撫でた。

「七海殿」

「ん?」

「キス、してもいいですか」

甘えたそうに眉を垂らすバジル。
全く、律儀というか奥手というか。
夫婦なんだから許可なんて要らないのにね。
びっくりしたけれど小さく頷けば、バジルは再び表情を緩ませてふわりと笑う。
手首を掴まれて、唇を優しく塞がれる。

ちゅ、ちゅ。

まるで猫のじゃれあいのようにキスをする。
バジルが何度も何度も角度を変えながらついばんでいく。

暫くしてバジルは唇を離して呟いた。

「この髪も、この肌も、この唇も。全て拙者のものですから。
誰にも、渡しませんからね――」

「…バジル?」

急にどうしたの?そう問おうとした途端、ぴたりと動きを止めたバジル。
不思議に思って顔を見上げれば、――既に眠っていた。

びっくりして暫く口を開けていたけれど、

「ふふっ。もう、仕方ないなぁ」

バジルからそっと離れて掛け布団を持ってきて被せておく。
お風呂にも入ってないしご飯も食べてないけど…まぁいっか。

「ねぇ、バジル」

好きだよ。
ぽつり呟き、額にキスを落とす。

幸せそうな寝顔を浮かべ静かな寝息を立てているバジルが、ふわり、笑った気がした。






 ちょっとおまけ。

「じゃあ行ってきます」
「お仕事頑張ってね」
「あ、その前に…七海殿を補給させて下さい」

ちゅっ

「よし、今日も頑張ります」
「ば、バジルっ!」




あとがき

完全燃焼\(^o^)/
バジル君好きだよ!

愛はあるのに口調が迷子…!


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