『ラストシーン』




青い綺麗な空から
梅雨掻き消して最後が訪れた





「千鶴?おい、千鶴!!今何処にいるんだ!?」

『さ…けさん……さ…』

俺は携帯電話に耳を宛て、必死に音を拾おうとする。ノイズの合間から僅かに聞こえるのは俺を呼ぶ声。


梅雨の晴れ間。さっきまで雨が降っていたせいでアスファルトの上には水溜まりができ、俺が駆ける度にバシャバシャと音を立て靴とジーンズを濡らした。しかしそんなことに構っている暇などない。早く、彼女のもとに――…



千鶴の行く宛てなど分からない。だからただ線路沿いの道を走り、千鶴を探す。

梅雨独特のじっとりとした空気を肺に吸い込み、足を休めることなく片手で汗を拭った。


嫌な予感がしやがる。


『――…さ……』

「千鶴?」

俺は一旦立ち止まり、耳を澄まして彼女の言葉を待つ。

『さの……ん……さ――…』

「……!!」


遠くで遮断機の途切れる音がした。









線路沿いの道をふらふらと歩く。ふと目に留まったのは一輪の花。花といっても雑草だろうそれは、先程までの雨で濡れて綺麗な雫が滴っていた。

ぽたり。

そこに頬を伝った新たな雫が垂れ落ちる。


嗚呼、なんとなく


なんとなく流れた涙。その可憐な花を汚してしまったようで申し訳なく感じた。



『ちづ…!……まどこ……』

「……左之助さん――…」

私の携帯電話は壊れかけらしい。それもそうか。ずっと雨に打たれていたんだから。今こうして電源が入っていることの方が不思議だろう。


カンカンカンカン


そういえば近くに踏切があったなと思い出す。

目的なんて知らない。

私はただ吸い寄せられるように音の方へと向かった。



「左之助さん……」


そっと目を伏せて、思い返すのは貴方との日々。

私は貴方との幸せで、不確かな世界に逃げ込んでいた。

貴方は悪くないんです。

ただ、私が堪えられなかっただけ。

私の歪な想いは貴方の真摯な想いにはハマらなくて、肝心なところで塞いで……。ぶつかり合う小石のように、互いを擦り減らしてばかりだったから。



カンカンカンカン――…



溶けるほど澄んだ空に、私の想いも、身体も、広がって弾ける。



左之助さん、さよなら



俺が最後に聞いた、彼女の言葉。

嫌な予感ほどよく当たるらしい。


彼女のラストシーンは蒼く澄んでいた。





fin.

『ラストシーン』 AS/AN KUN/G-FU GENERA/TION

勢いのままに書いてしまったww

細かい設定は考えていません。






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