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Happy Birthday Kageura.



6月4日。今日が影浦くんの誕生日だってずっと前から知ってた。だって好きなんだもん。好きな人のことは知りたくなっちゃうでしょ?
でも、私と影浦くんは特別な関係じゃない。よく話をするわけでもない、ただのクラスメイトだ。だからいきなりプレゼントを貰ったら困惑するだろう。そう思ってプレゼントは用意していない。けど、年に一度の日の好きな人が生まれた特別な日。やっぱり「誕生日おめでとう」くらいは言いたい。

そう思って、登校してからずっとタイミングを伺っていたのに、一向にそのチャンスは訪れない。
影浦くんと私は席が遠い。だから話しかけに行かなくちゃならないんだけど、影浦くんはいつもギリギリに登校してくるから朝は無理だし、休憩時間は影浦くんは同じボーダーの穂刈くんや村上くんと一緒にいて、話しかけられる雰囲気じゃない。村上くんも穂刈くんも優しいっていうのは知ってる。知ってるけど、みんなで纏まってるとちょっと話しかけづらい。
昼休みには他クラスや他の学年からお祝いに来る人がいて、行けなかった。たぶんボーダー繋がりだと思うけど、女の子も少なからずいてちょっとモヤモヤ。もしかしたらあの中に彼女がいるのかもしれない、とかネガティブなことばかり考えてしまう。話しかけることすら出来てないのに…

いやいや!なにネガティブになってるんだ!午後こそ話しかけよう!
………と思ったけど、そう簡単にチャンスが出来るわけもなく。放課後になってしまった。
影浦くんが一人になるどころか他のクラスから当真くんや北添くんも合流して、本当に近寄れなくなり、自分の帰り支度を急いですれば、もう影浦くんたちはすでに廊下に出ようとしているところ。

もうダメかな…
よし。直接は言えなかったけど、影浦くんに心の中で「おめでとう」と言おう。来年はもっと距離が近づいて自然にお祝いできるように頑張ろう。
そう思って男子軍団の中心にいる影浦くんに目を向ければ、カチッとぶつかる目線。

あれ、うそ。目が合った…?

次の瞬間ズンズンとこちらに歩いてくる影浦くん。え、待って待って。私何かした?


「てめぇ、視線がうぜぇーんだよ。なんかあるなら言え」
「あ、あの…その……」


これは怒ってる?怒ってるの? 気づかないうちに何かしてしまっただろうか。かもしれない。あんなに見つめていたら鬱陶しく思うか。
いやでもこれはチャンスだろ。ネガティブになっている場合じゃない! だって向こうから歩いてきてくれたんだぜ? この際だから言ってしまえよ!なまえ!


「………た、誕生日おめでとう…」


今日一日、声に出せずに繰り返した言葉を吐き出せば、ピタッと固まる影浦くん。

あれ? どうしたのかな?

結構長い間止まっているから覗き込んで顔を見れば、マスクをしてるからよく見えなかったけど微かに頬が赤くなっていたような気がした。影浦くんの後ろで、当真くんや穂刈くんが囃し立ててきたからその顔もすぐに見えなくなったけど。「だあああ!うるせぇ!!!!」ってそっち向いちゃったから。
まあ、逆に耳が真っ赤になってるのは見えちゃったし、そんな反応されるとちょっと期待しちゃうんだけどな。

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