後の後、泰平の世が訪れた後。 三成本人の許可を取って開封してみたところ―― 『刑部へ告ぐ。不測の事態ゆえ休暇の延長を請う。 普請の件、滞りなきよう頼む。 土産として家康の蔵書を持ち帰る。 奴には不要のものであるらしい』 どうやら三成はあの日、帰らずにいようとしていたらしい。 それだけで家康は十分に心が躍ったのだが、キッチリと書かれた文章の横には、走り書きのような文字で更なる文言が連ねられていた。 『追記 帰ったら相談したいことがある。 家康が笑うと 心がざわめく。 落ち着かない。 苛立つ。 礼を言われると苛立ちが失せる。 私は妙だ。 仕事が手につかない。 今しばらく、様子を見たい。』 家康は思わず文を握り締めて、必死に伸ばし。 丁寧に仕舞い直してから楽しげに、満面の笑みを浮かべて。 同じ空の下に身を置く三成の元へと一目散に駆けた。 了. ----備考---- 合同誌「行雲流水」に寄稿した小説です。 お題は「楽」。楽日は千秋楽。舞台などの最終日のこと。 そそりは千秋楽の舞台で、役者が冗談やおふざけを行うことです。 back/top/novel |