後に。 「みつ、なり、ヒッ、グスッ、み、ミッ、みつっぅ、なりぃぃぃ!!」 人の名をひたすら連呼しながら、オンオンと泣きじゃくる白髪混じりの老いた家康を見下ろして、三成は途方に暮れていた。 一体どうしろというのか、こんな男が天下人でいいのだろうか、様々な疑念と不安が胸中を包む。 だが、しかし、まぁ、頑張ったのだろう。 関ヶ原で勝利した後の家康の働きは、この涅槃の野原にまで伝わってきた。徳川幕府は島国という利点を生かして国を閉じ、国力を蓄えることに専念するらしい。 争いごとを嫌う家康らしいやり方だ。気に食わぬが認めてやらなくはない。先に旅立った己よりも何倍も苦心して、自身の理想を形にした。口だけのキレイ事ではなく現実に、日ノ本の民は皆、笑っている。 「貴様は本当に女々しいな」 三成はため息を吐きながら、膝を折り、刀を置いた。その動作を見た家康の顔が、さらにぐしゃりと歪む。 心底呆れながらもグシャグシャと頭を撫でてやると、 「うっ、ううぅっ……みつ、なりぃ……!」 どういう仕組みになっているのかはわからないが、どうやら嬉しいらしい。 涙と鼻水でグチャグチャに汚れた満面の笑みを向けられて、 「くくっ、家康。貴様、面白い顔になっているぞ」 三成も腹の底から満面の笑みを返した。 了. ----備考---- ツイッターで長々と書いたもの。 家康の肩の荷を下ろしてあげたかってん。 back/top/novel |