お互いに志摩兄弟に嫉妬し合う廉燐
志摩視点ですが京都弁が死にました。すいません。





「しまぁー!!早く早く!!」

「おん!ちょっと待っとってな、奥村くん」

今日俺は奥村くんと京都に来ています。正十字学園も長期休暇に入り、候補生の俺たちには大きな任務も入ることなく、少しだけだが休暇を貰うことがてきた。
そして、俺はせっかくの休みに奥村くんを楽しませたくて、京都に一緒に連れて来ることにした。
あの小姑の奥村先生は運良く任務が入り、久しぶりの2人っきりや。
奥村くんの手を取りバスに乗り込み実家の近くまでバスで向かう。

「志摩の家かぁ…俺、初めてだ。楽しみだなぁ」

キラキラと瞳を輝かせる奥村くんがものごっつ可愛くて、ぎゅっとしたかったが、ここは一応公共の場。場を弁えることくらい俺は出来るで!そう自分に言い聞かせながら俺は抱きしめたい衝動を何とか抑える。

「志摩の兄ちゃんに会うのも久しぶりだな。前に任務で少し会っただけだったし」

「……」

!!!?わ、忘れとったぁ!!家に帰れば柔兄や金兄がおるんやった!!
2人が居ないことを確認せずに来てしまったことを俺はバスを降りてから後悔をした。
2人がこの前の任務の時に奥村くんを気に入ってた事くらいは分かる。流石兄弟やな…なんてことも考えたくらいや。

「た、ただいま…」

「おじゃまします!」

恐る恐る入る俺に続き、元気良く挨拶をする奥村くん。奥村くんの声を聞きつけてバタバタといくつかの足音が聞こえてきた。やっぱ居ったんや…。

「おぉ!!奥村くん久しぶりやなぁ!!」

「お久しぶりです柔造さん!!」

「よう来たな燐くん!ゆっくりしていきや」

「ありがとうございます金造さん!おじゃまします」

あれ…?俺の存在忘れとらんか?帰って来ていきなりガンスルーされる俺。何やの?柔兄も金兄も、奥村くんにベタベタすんなや。俺んやで!?そんで、金兄!奥村くんを気安く名前で呼ばんといて!!むすっとした顔で兄達と奥村くんのやり取りを見ていると、そんな俺に気付いた兄2人がこっちを見てニヤリと笑った。む、ムカツクぅ…!!

「ほら、廉造もそんなとこで突っ立てないではよ中入り」

「お、おん」

柔兄に促され渋々返事を返し、靴を脱いで家に上がる。奥村くんは柔兄と金兄に構われながら俺より少し前を歩く。それを出来るだけ見んようにしてとぼとぼ後ろを付いて居間に入る。

「今日は疲れたやろからゆっくり休みい」

「そやな、明日は一緒に京都観光しようや燐くん!」

「おぉ、ソレええな!そおしようや!な、奥村くん?」

「ちょっ、ちょお待ってな!!奥村くんは明日俺と一緒に京都回るんやで!?」

暫くは正十字学園の事だとか、塾の話をしていたのにふと、金兄が一言。それだけは勘弁して欲しい。明後日には正十字に帰らなければならないし、今日だって奥村くん疲れてるやろから明日いちゃいちゃするつもりやったのに!!ぎゃあぎゃあ騒いでる俺ら兄弟をじっと見つめる奥村くん。こんな騒がしい兄弟はやっぱり珍しいのだろうか。奥村兄弟はなんや、全然うちと違うし。やっぱ少し落ち着いた方がええんやろか?

「な、奥村くんは皆で京都観光したいよな!」

「えっ!?あの…」

「せやせや。絶対廉造と2人っきりより大人数のが楽しいで?」

「は、はぁ…」

俺が奥村くんに気を取られてるうちに、俺を取っ掴んでいた手は奥村くんの肩や腰に移動していた。何、その手は!!気安く触んなや!

「柔兄も金兄ももうええやろが!奥村くん離したってや!」

「ええやんか別に、奥村くんとはこんな時じゃないと遊べんのやから。な、金造?」

「全くや!お前は学校戻っても毎日会えんやろが!今日ぐらい兄ちゃんに譲れや!!」

奥村くんをぎゅうぎゅうに抱きしめる兄達に、流石にカチンと来て奥村くんの腕を少し強引に引っ張る。いたっ…と少し痛そうな声が聞こえたけど心の中で堪忍え奥村くんと謝りながらそのまま奥村くんを自分に引き寄せる。

「金兄も柔兄も奥村くんにベタベタしすぎや!奥村くん困っとるやろ?」

「し、志摩ぁ俺別に平気だぞ?志摩の兄ちゃん好きだし!優しいし…明日は皆で行って、2人っきりではまた今度行こぜ?」

何を勘違いしたのか奥村くんが柔兄と金兄を好きと言い出した。恋愛感情じゃなくても奥村くんの口から俺以外の人を好きだと出てきたのが凄くショックで。すっと、奥村くんの腕を掴んでいた手から力を緩ませ腕を開放した。黙り込んだ俺を不思議に思ったのか奥村くんが志摩?と顔を覗き込んできた。でも、どうしてかそれも今は胸を苦しく締め付けるだけで、何時もみたいにへらっと笑うことが出来なかった。

「……もう…ええわ……」

「え?志摩何て?」

ぼそりと一言。それが聞き取れなかったのか奥村君が聞き返してきた。自分の胸の中にあるもやもやした嫌な感情が次々と募ってしまい自分でも制御が効かなくなって俺は…

「…ッもうええ言うとんねん!!行きたきゃ奥村くんと柔兄達で行ったらええやんか!!!」

はぁはぁと息を荒くするほど大きな声で叫んでしまった。こんなに大声で叫んだのって何時ぶりやろか。奥村くんやっぱり吃驚してはる。そりゃ驚くわな。でも、堪忍え。今はそんな奥村くんの顔もまともに見とうないねん。ごめん。とだけ言って俺は居間を後にした。そのまま自分の部屋に入ってドアを背にしゃがみこむ。

「はぁ…俺、何やっとるんやろ。今頃は奥村くんといちゃいちゃしてはったのに…」

コレは完全な自分の嫉妬。やきもちを勝手に妬いて奥村くんを一方的に怒鳴ってしまって…俺、最悪やんか。はぁ…とまた溜め息をひとつ。するとドタバタと大きな足音が俺の部屋に近づいてきて勢い良くドアを蹴飛ばした。

「おわぁ!?お、おくむらくん!?」

ドアに背を預けていた俺はドアが開いた勢いで部屋の真ん中まで吹っ飛ばされた。後ろを向けば其処には俯いたまま突っ立た奥村くんがおった。

「し、まのばかぁ…」

俯いたまま一言。しまった、泣いてもおたかな?そう思い恐る恐る俺は奥村くんの顔を覗き込んだ。

「お、くむらくん泣いてはります…?」

「うっ…な、いて……ねぇよバカ志摩!!!」

「ふぇえ!!?」

俺が奥村くんの肩を押しながら奥村くんの表情を伺おうとしたら奥村くんがいきなりバッと顔を上げた。その奥村くんは意地を張りながらも涙目!!なーんてこともなく、本当に奥村くんは泣いてなんかいなくて、きっと俺を睨んできた。あかん、こりゃ相当怒ってはりますわ…。

「奥村くん。ご、ごめん!!あんな俺……んむぅ!?」

一瞬何が起きたか分からなかった。一生懸命弁解しようとおろおろする俺に奥村くんが俺の口を塞いだ。奥村くんの口で…。

「はっ…おく、むらくん?」

「……」

いきなりの出来事で、でも奥村くんからのキスが嬉しくって、さっきまでのいろんな感情が吹っ飛んでしまった。…あぁ、俺って何て現金な奴なんやろなぁ。なんて惚けてると奥村くんが顔を上げて俺の目をしっかりと見つめてきた。だから俺も見つめ返す。至極真面目な顔で。

「おれ、志摩に何かしたか?」

「うっ…ごめん。奥村くんは何も悪ないんよ。俺が勝手に嫉妬しとっただけやねん」

「ばっ、ばっかじゃねぇの!?何処にそんな…んんっ」

俺の答えに顔を真っ赤にして嫉妬するようなことなんて…って考える奥村くん。ごめん。滅茶苦茶俺が嫉妬する要素ありまくりでしたよ。でも、そんな言葉も今度は俺が塞いでやった。俺の唇で、奥村くんの唇を。

「ふぁ…しま?」

「奥村くんこそ、何やうちに来てからやけに静かやないですか」

奥村くんにしてはやけに静かだとは家に着いてから思っていた。確かに初めて来るとこだったとしても、彼はそんなの気にしないタイプだと思っていた。何処に行っても直ぐに打ち解けてしまいそうなのに。やけに静かだったから、実は少し気になっていた。俺が尋ねれば言いにくそうに奥村くんは答える。

「あ…いや、志摩は兄弟と仲。いいなって…思っ…て…」

「はぁい!?」

ごにょごにょと最後の方が聴こえなかったけど、え?俺と柔兄達が仲がええ?いや、全然仲よぉないで?普通や普通。むしろ仲悪い思うで?つか、帰ってきてから喧嘩しかしとらんかったのに何を見てそう思ったのだろう…

「だって、志摩の兄ちゃん志摩にすげぇ優しい目で見てたもん…」

「ないないっ!!そんなんうちの兄貴に限って有り得へんから!!」

全力で否定する俺に、志摩には分かんねえよ兄ちゃんの気持ち何か。そう言う奥村くんの目はお兄ちゃんの目をしていた。確かに俺は末っ子だから兄の気持ちなんて全然分からんけど…

「俺に構うのだって本当は志摩を構いたいだけで、志摩の兄ちゃんも素直じゃないんだよ…弟に対して。久しぶりに会った弟と一緒に居たいだけなんだよ…たぶん。だから、皆で行こうと思ったんだけど…やっぱ俺は志摩と行きたいし…」

いやいや!全然違いますよ奥村くん!うちの兄ちゃんは全力で君を気にっとるんやから!!だって俺の兄弟やで!?つか、え?俺が柔兄達と仲良うしてるように見えたから奥村くんは静かにしてた言うこと?それって…

「やきもちなん?奥村くん」

「ばっ…ちげぇよ!!そんなんじゃねぇ!!」

顔を茹で蛸のように真っ赤にした奥村くんが違う違うと手を振るがそんなんじゃ隠せてへんよ奥村くん…。何かホント、さっきまでのもやもやしてた自分が馬鹿らしくなる程奥村くんがオレら兄弟に嫉妬してくれたことが嬉しくって…。言うとっけどいつも俺は奥村兄弟にも嫉妬しとるんやからな!!少しでも俺の気持ち分かってっくれたんやろか…。

「志摩、ごめん。俺ちゃんと明日柔造さんと金造さんの誘い断るから、だから…明日は2人っきりで観光行こうな?」

「おん、ありがとぉ奥村くん」

ぎゅっと抱きしめ合って、今度はどちらからでもなく、またキスをひとつ。あぁ、俺はホンマ幸せもんやな。奥村くんと2人っきりで観光も出来るし、奥村くんにやきもちも妬いてもらったし。しかも、奥村くんからのキス付きや!俺は奥村くんとひとつのベットに入った。最初は嫌々だった奥村くんも俺が逃がしてくれないのを分かってるから、俺の我が儘を聞いてくれて渋々了承。ぎゅっと抱き合って俺らは眠りについた。明日はめい一杯奥村くんに我が儘をさせてやろう。そうひっそりと誓った。









――――――――

「あぁ…完全に廉造怒らせてしもうたな」

「そやな、廉造も全然俺らに構ってくれなくなって。兄ちゃん淋しいで」

「燐くん弄ってると面白い位に食いつくんにな」

「はは、あのムスッとした廉造の顔はホンマ可愛いわ」

「燐くんもかわええし廉造いい嫁さん捕まえたな」

「せやな、早く奥村くんと結婚してうちに帰ってこんかの。奥村くんが居れば廉造もずっとうち居るやろし」

「柔兄相当なブラコンやな」

「金造もな。先ずは奥村くん落とさなあかんな」



(やっぱり柔造さんも金造さんも志摩のこと大好きなんだな…)

夜中トイレに起きた奥村くんが翌日2人っきりの時に、柔兄と金兄が酔っ払いながらそう話していたのを教えてくれて顔を真っ赤にしてしまった。だって、正直嬉しいやんな。俺も兄ちゃんたちはその、す…好きやし。すると奥村くんはそれが気に入らないのかぐいっと俺の頬を挟んで奥村くんに顔を向かせ、ちゅっとキスをした。また妬いてくれたんやろか、ホンマに可愛い可愛い俺の奥村くん。

俺が今日は奥村くんの我が儘沢山聞いたるよ?と耳元で囁けば…

「今日は俺だけの事考えろよ…」

って。ホンマ可愛すぎやろ!!不安がらんでも俺は何時でも奥村くんのことしか頭にないえ?そんで今度は俺からのキスを君に送るよ。





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柔+金→志摩燐な感じの話でした。

志摩は燐に構いすぎる柔兄達とまんざらでもない燐にやきもち。
燐は志摩兄弟の喧嘩がいちゃいちゃに見えたようでやきもちw

志摩兄弟のやりとりにやきもち妬く燐をください。
自分じゃ全然上手く書けないです…