俺は志摩が好きだ。志摩の優しい手で頭を撫でられるのが好きだ。甘い声で"すき"と囁かれるのも、暖かい腕で抱きしめられるのも全部、全部好きだ。志摩が居ないと死ぬんじゃないかって思うほど大好きなんだ。




「奥村くん、どしたん?」

俺を心配する志摩の顔が鼻と鼻がくっついちゃいそうなほど近くにあって、ぶわっと、身体中が熱くなった。

「な、何でもねぇ!」

そう言って慌てて志摩との距離をとる。
会うのは久しぶりなのに、ホントはもっと近くにいて、沢山触れて欲しいのに。
そう思ってるくせに、会えなかった5日間が凄く長く感じて、目の前の志摩が実は自分が望んだただの夢なんじゃないのかって思って、触れられるのを拒んでしまう。だって、

「お前、勝呂たちは…」

志摩は本来なら今、勝呂たちと一緒に京都にいるはずだ。5日前から約1週間実家に帰省している。だからまだ、帰ってくる予定日じゃな。志摩が帰省してから毎晩のように夢で志摩を見るから、きっとこれも夢なんだと思ってしまった。
さっきまで昼寝をしていたし、何の連絡も無しにいきなり現れた志摩を夢だと思っても仕方ない。

「おん、奥村くんに会いたくなってん、早めに帰ってきたんよ」

そう言ってまた、志摩が距離を縮める。
そっと触れる志摩の手が暖かくて、触れられた手から伝わる暖かさに目の奥がジィンと熱くなった。
ずっと求めていた温もりにすがりつく様に志摩に抱きついた。ぎゅっと、志摩のシャツを握って本物の志摩だって確認するかの様に志摩の胸に顔を擦りつけた。
これは本物の志摩だ。志摩の匂いがする。
夢の志摩はいつもと違って、何も言わないし、触られても暖かさを感じない。抱かれたって匂いもしない。志摩は確かに目の前に居るのに無だった。
だから志摩に抱きつくと、匂いが、温もりが、心臓の音が、それは本物だと証明してくれた。

「しま、」

「おん?」

「会いたかった」

「俺もや」

志摩が本物のだと分かったとたんに泣きたくなった。そんな俺を宥めるように優しく背中を撫でる志摩がくすっと笑い、今日の奥村くんは甘えん坊さんなんやねぇってからかう。だけど実際ものすごく甘えたいのだ。
5日間会えなかっただけで死んじゃいそうな程寂しかった。毎日、毎日誰を思って過ごして来たと思ってる!

「寂しすぎて死ぬかと思った」

ぼそっと呟いた俺の一言に一瞬目を丸くした志摩に、こてっと首をかしげると、すぐにくしゃりと笑って抱き寄せられ、大好きな声で囁かれる。

「りん、」

「…っ」

久しぶりに呼ばれた名前にかぁと赤くなる顔を俯いて隠す。でも、きっと志摩にはバレバレなんだろな。だって、さっきからずっと笑ってる。

「俺も死ぬかと思ったで、燐に会えんのがこんなに辛いとは思わんかった。俺たち毎日一緒が当たり前やったもんな」

そう、気付けばいつも志摩が隣にいて。こんなに離れた事がないから、自分が今までどれだけ志摩で生きてきたかを思い知らされた。
きっと、それは志摩も同じで、だからこうして、幼馴染みや家族を置いて俺のところに帰って来てくれたんだ。
そう思うと、今度は幸せすぎて死にそうだ。
次第に重たくなる瞼を必死に堪える。

「燐、眠いん?」

瞳をとろんと、させてる俺に志摩が問いてきた。俺は首を横に振る。確かに眠いけど、でもまだ志摩といたい。志摩をもっと感じていたいのだ。

「や、だ。志摩とまだいたい…」

やだやだと、駄々を捏ねるみたいに首を振って志摩の服を強く握る。志摩はかわええなぁ、とか言いながらそっと俺の頬を両手で包み、顔を上げさせる。

「俺、疲れてしもたから、燐。一緒に昼寝してくれへん?」

志摩のそんな優しさに、また幸せが募る。
こくんと、頷けば俺を抱えたまま志摩は俺のベッドに向かう。
ボスンとふたりしてベッドへ倒れ込む。
ぎゅって抱きしめる志摩の腕が優しくてもう限界だ。眠い。
うとうとしてると志摩がクスリと笑った。

「俺が起きたら1番に燐に会える思たら幸せすぎて俺、往生しますわ」

幸せいっぱいの笑顔で志摩が言う。ああ、志摩も同じなんだ。それがまた酷く幸せでしょうがない。

「お前、幸せでも死ぬのかよ」

「そやで、燐に会えないと苦しくて死ぬし、燐といれると幸せ過ぎて死ぬんよ」

「はは、俺も。志摩の為に、志摩のことで死ぬ」

「じゃ、このまま一緒に死にます?」

「いいな、それ」

お互いに顔を見合せて、笑いあう。幸せな時間が刻々と過ぎていき、志摩が俺の額に優しいキスを下したのを合図に、俺は大好きな志摩に包まれながら久しぶりの深い眠りについた。



俺らは今日、幸せに包まれながら死んだ。
結局俺は死ぬんだな。大好きな志摩を思って、志摩もまた俺を思って。




共に死のう。







end


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志摩依存の燐が書きたかったけど
なんじゃこりゃになった…