「総司、そこで何をしている」



僕が縁側で日向ぼっこしていると、斎藤君がやってきた。



「何って…見て分からない?」
「…いや」
「何もしてないんだよ」



そう、僕はただこうして、庭を眺めてるだけ。しばらく巡察もないから、ひがな一日こうしているだけ。とりわけ今日は暖かくて、日向ぼっこにはちょうど良い。こんな時は、



「姫が居ればいいのになぁ」
「っ!」
「…ねぇ斎藤君。姫が何処に行ったか、知らない?」



斎藤君が動揺しているのが伝わってくる。彼がこれほど明らさまに取り乱すなんて、珍しい。明日は槍でも降るのかな。



「…遠い場所に出掛けてくると、そう聞いた」
「ふぅん。早く帰って来ないかなぁ」



僕はまた、庭を、それから空を見上げる。斎藤君はしばらく其処へ立っていたみたいだけど、会話することもないと察したのか、気付いたら気配を消して居なくなっていた。

それから半刻ほど経っただろうか、今度は丸分かりの気配が近づいてきた。このへたくそな隠し方は千鶴ちゃんだ。



「どうしたの、千鶴ちゃん」
「お、沖田さん!?気付いてらしたんですか!?」
「バレてないと、思ってたの?」



振り向かずに声をかけると、千鶴ちゃんは案の定大変驚いてくれた。そこまで大袈裟な反応をされると、それはそれで傷つくんだけど。まぁ、いいや。手に盆を持っているのを見ると、どうやらお茶を運んでいたようだ。



「そのお茶、土方さんに?」
「あ、いえ、これは沖田さんに、と」
「誰に言われたの?」
「あの…土方さんに」
「……そ」



変な気を回すようになったもんだ、あの人は。少し、複雑な気分。

立ち尽くしておろおろとしている千鶴ちゃんに、座るよう言うと、少し躊躇った後に僕から離れたところに座った。



「そんなところじゃなくて、こっち来なよ」
「でも…」
「良いから」



僕の横を叩く。またしばらく躊躇った後、おずおずと彼女は進み出てきた。



「千鶴ちゃん、甘いもの、好き?」
「えっと…まぁ、はい」
「じゃあこれあげる」



僕は懐から包みを出すと、どうしていいか分からないという顔の千鶴ちゃんに両手を出させ、そこへ中身を落とした。色とりどりな金平糖が、彼女の手のひらに落ちる。その中から数粒取り上げて、後は食べていいよ、と彼女を促した。それでも彼女がこちらの様子を窺ってるから、僕は摘み上げた金平糖を口へ運んだ。



「別に、毒なんて入ってないよ」
「…いいんですか?私が頂いて…」
「うん。…本当は姫と食べようって思ってたけど、なかなか帰って来ない姫が悪いんだよ」



ね?と僕は笑ったんだけど、千鶴ちゃんは全然笑ってくれない。むしろ泣きそうな顔で拳を握り締めるばかり。



「どうしてそんな顔をするの?」
「……沖田さん。姫さんはもう、」
「千鶴ちゃん?」
「…っ…」



ちょっと殺気立ててみただけなのに、それだけで千鶴ちゃんは萎縮してしまって何も言えなくなっていた。お茶、変えてきますね。そう言い残して、居なくなる。

最近、みんな変なんだ。よそよそしくて、腫れ物を扱うように。姫が居たときはそんなことなかったのに。姫が居なくなってから何もかも変わっちゃった。近藤さんが優しくしてくれるのは嬉しいけれど、土方さんや山崎君まで僕のことを気遣う素振りを見せるのは気味が悪い。ねぇ、姫。早く帰ってきてよ。そしたらこんな風な生活もきっと終わるよね。










ねぇ、どうして君は死んじゃったの?






─────

ゲーム版を意識してみました。

(13/03/28)

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