しばらくすると政宗が部屋に戻ってきた。
少し髪に水が含んでいる。

「風呂入っきたのか?大衆浴上まで行ったのかよ?」
「いや。この見世は専用の風呂が用意されてるから」

さすがに街一番の遊郭だ、と元親は感心した。
隣に政宗が座る。
いつもの香の代わりに石鹸の匂いがして、これはこれでいいと思った。
酒の膳が運ばれてきた。
政宗が酒器を持って元親の杯に酒を注いでやる。

「今日で三日目だな。どうしてもオレを抱きたくはならねえのか?」

元親がむすっとした顔をする。

「口づけが先だ。あんたこそまだその唇を許してくれねえのかい?」

政宗は唇で笑うだけだった。
しばらく二人で飲んでいたら、政宗は少し暑いな、と合わせを開いた。
合わせから見える抜けるような白い肌、そして色の薄い胸の尖り。
元親はチラチラと見てしまう。
それに気づいた政宗が言った。

「なんだ?見たいのか?」

政宗は着物を胸が見えるところまでずらした。
胸元に入れていた懐紙が落ちる。
元親の目が泳ぐ。

「そうやって見てな」

政宗は自分の首に手を当て、鎖骨を通りその手をするするとゆっくり胸まで滑らせる。
そして自分の胸の色づきをその細くて長い指でこね始めた。
ぷっくりとそこが立ち上がる。

「は………」

政宗の顔つきがとろりと溶けた。
下帯を解くと足を元親に見せるつけるように開く。
政宗は着流し姿だ。そうするとすべてが見えてしまう。

「お、おい、政宗?」
「ああ…」

半分硬くなっていた雄に手を添えると扱き始める。

「ん……、ああ…」

乳首を弄り、茎を扱き、甘やかな声が上がる。
元親はごくんと唾を飲み込んだ。
一人喘いでいる政宗の姿は限りなく淫らでいて、なのに美しさは失わず、これは本当に自分と同じ男なのだろうかと元親は思ってしまった。

政宗は這いつくばって元親の帯を解き、袴をずらす。
そして苦しそうになっていた下帯を解いた。

「お、おい、一体何を…」

元親の肌が直接感じる膝の上に政宗は乗る。

「…触ってくれ…」

抗いがたい誘惑に元親は政宗の若い茎をつかむ。
薄い桃色のそこでさえも綺麗で、そして熱く滾っていた。
政宗は元親のガチガチに硬くなった茎をつかんでこすり始めた。

「すげ…え、でけえな…」

互いのをしごきあい、亀頭をこすりつけ合うと先走りがぬっちょりと音を立てる。

「ここも…」

政宗は開いている元親の手を胸に誘った。
はじめに見た色の薄いそこは今では桃色に近く、ツンとすましているような風情でいて、元親を待つ。
元親が胸の尖りをいじると政宗の雄はビクッと震えた。
色づきを触るのをやめて政宗の腰に手をまわし体をギュッと引き寄せると、政宗の陰茎をこすりながらも、元親はジュルリときつく乳首に吸い付いた。

「ああっっ!」

政宗の背がしなる。

「気持ちいい…あ、ぁ…」

扱きながら二つの雄の切っ先を擦り合わせぬちぬちと音をならせる。

「も、もたねえよ…、一緒に…っ」

政宗の手の動きが早くなり、それに合わせるように元親も上り詰めさせるような動きを始めて、そしてあっけなく二人は果てた。

「……ほら、そろそろ挿れたくなったろう…?」

政宗は二人の吐き出した精液まみれの手を舐めて目で誘う。
その姿はこの上なく淫靡だ。

このまま政宗を押したおして、その秘壺に剛直を挿れて政宗を翻弄させて、喘がせたい。
しかし、やはり口づけもなしに及ぶ行為にはあまりにも悲しいではないか。

元親は懐紙で汚れた部分を拭くと袴を直した。
政宗は肩をすくめて苦笑いをしてそれに倣う。

「政宗、俺は身受けを考えている」
「身受け?オレの…?」

元親は政宗を抱き寄せた。苦しいほどに力を込める。

「あんたが好きで好きでたまらねえんだよ!!全財産つぎ込む。船さえ売ってもいい!!だから…」
「Stop」

政宗は元親の抱擁を解き、窓辺に立った。
三日月の光がうっすらと入り込む。

「それはできねえんだ」
「いくらでも金は出す。あんたをここに置いていたくねえ。誰にも触れさせたくねえ。俺のそばに置いておきてえんだよ!!」

どん!と元親は床を叩いた。

「…。ここで生まれたものは、この街を出てはいけない決まりなんだ…」
「ここで生まれた…?」

政宗は元親を見ずに続けた。

「母はこの店の太夫だった。でも好き合ってた相手がいたんだ。オレの父はあんたみたいに金を持ってなかった。身受けもできなくてな…。通ってるうちに腹に子供ができた。それがオレだ。本当なら子供ができたら下ろすのが普通なんだが…。母はどうしても産みたいと、父と二人で足抜けをしたそうだ。でもすぐに見つかった。その頃にはもうオレが生まれる直前になっててな。しかし、見つかってしまったんだ。母は見世に戻され、足抜けへの折檻を受けている途中でオレを産んだ。でも、オレを産んですぐに亡くなったんだ…。それを知った父は己のせいだと自害した」
「政宗…」
「この街では、ここで生まれれば二度とここから出られない。それでなくともここではオレは有名だしな。この見世から離れることさえもできねえだろう…」

元親は政宗の隣に立った。

「オレはここを出られない。でも他の遊女と違って客は選べるし、オレのRuleも通る。ここは籠の中だが、それでもオレはひどく自由だ。そう思うだろう……?」

政宗は唇に微笑みをのせていたが、元親にはそれが泣いてるようにしか見えなかった。
元親は政宗を後ろから抱く。
こんな悲しい顔をさせたかったわけじゃない。

唇は許されないとしても。
ここでは二人だけの空間なのだ…。
それだけで満足しなければならないのか。
政宗は振り返って、元親の頬に手を当てた。
その目は元親と会えなくなるのを悲しんでるように見えた。







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