繋がって

でさー、とテノールの明るい声。
廃れた教会の中、一部が腐って朽ちたベンチの右端に座るのは双子の弟のルイス。それと、彼のすぐ隣に立つクジャと、ベンチ左側の脇に立ったままのわたし。
腐って苔の生えたベンチに座るのは気分が悪いと、クジャと二人で口を揃えたけど弟は気にしないみたいだ。

「クラウドってばクールにキメてるけど、すんげえティファのこと気にしてるのな」
「そりゃ、もちろん大切な人がいたらねえ」
「僕だってジタンを気にしてはいるけど」

いかんせん立場が悪いんだよねえ。なんてったて、敵陣なのだ、もとより大切である存在がいるのが。

「ソロは嫌いじゃないけど、孤独に演じるのも歌うのも、なかなかの舞台だよね」
「……ジタンは、どうしてる?」

ルイスの質問にふぅ、と息を吐く。
……ああ、なんでこんな不器用なんだろうなあ、この兄貴は。

「落ち込んでるよ、相当ね」
「だろうね」

わたしの答えに、ルイスが速攻で頷いた。クジャも余計に落ち込んじゃうでしょう。
そう思ってクジャを見やるけど、特別表情は読み取れなかった。
……ああ、そっか。クジャはきっと、予想はできてたんだろうな。こうなること。それでも、落ち込んだ思いをあえて殺しているのかも知れない。

「ね、ルイス、あんたは大丈夫なの? ぼっちになってない?」
「おい、ぼっちとか言うなよ。クジャもクラウドもゴルベーザもいるってーの」
「みんな年上じゃないの。それお世話になってるって言うんじゃ、」
「年の近いティナは取り込み中。ティーダは俺には取っ付きづらい」

なんてやり取りをしていると、クジャが控えめに笑い声をあげた。

「君のお姉さんは心配性だね」
「だって、カオス側の人たちってみんな自由でまとまりないじゃない。やりたいこともそれぞれ違うみたいだし」
「そんなこと言ったら秩序軍もだけどな」
「わたしのところもフリーダムだけど、そっちよりかはまとまりあるよ」

へー?、と胡散臭そうにするルイス。何? と聞けば、なんでもねェよ、との返答。……確かに、フリーダムすぎる人もいるかも知れない。

「……ここはいつ来ても穏やかだね」

ふいに焼け落ちた天井を見上げ、降り注ぐ光に目を細めるクジャ。わたしもルイスも同じように仰ぐ。
破壊された時は悲惨だったけどね、とこぼせば「詳しいことを聞くつもりはないよ」と返された。うん、しみったれた話は聞きたくないよね。頷いて、せめて手短に説明だけでもと口を開いた。

「元々綺麗な教会でね。今は傷跡が残ってこんなだけど、でもここであった繋がりや、悲しいことを忘れないようにって残しておこうって話になったの」
「繋がり……」

ぽそ、と呟くクジャ。それから踵を返して、そろそろ戻るよと告げた。「つまらないお芝居は早く終わらせてほしいものだね」と付け加えて、彼はルイスと一緒に文字通り闇に包まれて去ってしまった。

そう、ここであった繋がりを胸に抱いて、この世界から早く抜け出して、元の世界へかえろう。心の傷はいつまでも痛むけど、大切な人たちのぬくもりも暖かいままだから。



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