「……そういえば、わたしウォーリアが笑った顔って見たことがないなあ」

次元の城の芝生に体育座りをして、膝のあたりに肘をついて頬杖をついたまま素朴な思いでそうこぼした。
対してウォーリアは、わたしの隣できょとんとする。

「……笑う?」
「うん。ほら、バッツたちはよくニコニコしてるじゃない?」

示した方向には、バッツやティーダがじゃれあう光景。彼らの明るい笑い声が響いている。
スコールはじゃれあいに巻き込まれないためか、離れた場所でクラウドと何やら話し込んでいた。
最近イミテーションの数は少なくなってきて、少し余裕ができていた。そんな中、久々にコスモス軍のメンツがみんな揃ったので、一緒に一時の休息というわけだ。

「ウォーリアの笑ったところも、ちょっと見てみたいな」

そう言うと、ウォーリアは少し険しい顔をして黙ってしまった。……難しく考えているサインだ。

「笑う、というのが私にはよく分からないな。楽しければ笑えるものだろうか」
「大抵の人はそんなもんだと思うよ。あとは、あったかい気持ちになったり、大切にしたいって気持ちになれた時にも自然に笑えるものじゃないかな。……こう、なんていうか、胸の奥にじんわり何かが広がる感じ、……って言えば分かるかなあ」

わたしの説明でなんとなくイメージは掴めてもらえただろうか。ちょっと不安になって視線を向けると、ウォーリアは目を閉じ、何か考えてるような。
少ししてまぶたを開き、視線を前へ向けてふっと息を吐く。

「……そうか。そうなのだな」

ウォーリアはそう言ったっきり黙ったままで、ぼんやりと目の前の光景を眺めていた。まあ、急に笑えって言われてそう簡単に笑えるものじゃないよね。

再び沈黙がおりた。でも、決して嫌な沈黙じゃなかった。むしろ心地よい、というか。

そよそよと穏やかな風が吹く。
ジタンやバッツ、それにティーダの明るい笑い声が響く。
フリオやセシルが怪我しないでくれよとちょっと困ったように注意する声も聞こえる。
それまでティナと談笑していたたまちゃんは今度は呆れたように三人を眺めているし、ティナは微笑ましそうにしていた。

あっ、バッツがスコールの服を引いた。スコールが迷惑そうな顔をしたけど、抵抗しないのは彼の優しさだ。今度はクラウドの腕をティーダが掴んだ。クラウドもちょっと困ったようで、何か言っていた。
ジタンがわたしたちが見ているのに気づいて、こちらに手を振った。

「おーい、レイ、リーダー! 二人もきたらどうだ?」
「うん! わたしも今いくよーっ!」

わたしも思わず顔が緩んでしまった。ああ、彼らといると楽しくて飽きない。
立ち上がりながらウォーリアの方を振り返る。ウォーリアはどうする? と聞こうとして、思わず固まってしまった。

仲間を見つめるウォーリアの瞳はほんの少し細められていて、口角は微妙にあがっていて。いつも厳しい顔をしている彼が珍しく穏やかな表情をしているのだから、それは、たぶん間違いなく、

「……っ!」

理解するとともに、頬に一気に熱が帯びるのを感じた。

……不意打ちって、本当に卑怯だ。
ジタンが何か声をあげたのが聞こえた気がする。けれど貴重な体験は、こっそり胸のうちに秘めておこう。

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