「あれ、レイ。それどうしたんだ?」

レイの腕の中のものを見るなり、俺は目を丸くした。
俺の言う「それ」とは、レイが抱える色とりどりの花の束のこと。白やら黄やら赤やら、色に統一性はない。植物の知識はないが恐らく色んな季節のもの、なのだろう。

「これ? …ほら、泉の近くに森があるでしょう。敵の気配もなかったし、探索してたらお花畑見つけたんだ」

コスモス軍の拠点である古城の近くには泉があった。
(厳密には秩序の聖域が拠点だが、古城の方が休息など取りやすいので“拠点”といえば古城、ということになっている)

花をこうして摘んできたのはレイいわく、ここのところ戦いが続いてるため少しの癒やしにでもなれば、と思ってのことらしい。
レイのこういった女性らしい心遣いは正直、コスモス軍のためになっているから感謝せざるをえない。

…しかし、ほとんど興味が湧かなかったので、森へ入ろうなどとは思わなかったが。

「へえ、この世界に花が咲いてるなんてな」
「わたしもまさか咲いてるなんて思ってもみなかったよ。…はい、フリオにはこれ。良かったらもらって」

レイが花束の中から一本抜いて、差し出した花。それは自分が持ち歩く花とよく似た姿をしていた。

「これは、…バラ?」
「そ。夢なんでしょ? ティナから聞いたよ」

何気なく言われて、俺はまた目を丸くする。
のばら咲く世界のことか。
…いつの間に話が広まってるんだ?

「ありがとう。…男の俺が花なんて、似合わないけどな」

赤いバラを受け取りながらも、本心をこぼす。するとレイは首を横に振って、笑った。

「そんなことない。よく似合ってるよ」
「…そうだといいんだけどな」

言いながら花束にもう一度視線を下ろして、ふと一種類の花に目が止まる。

「ちょっと、いいか?」
「ん? どうぞー」

あまりに抽象的な質問だったが、レイは察してくれたようだ。
差し出された花束。そこから一本、赤いガーベラを抜いた。そして自分のナイフを使って、茎を適当な長さに調整する。

「何してるの?」
「いや、似合うと思ってな」
「……?」

レイは疑問符を挙げながらも、俺の手元を眺める。
ある程度調整が終わると、ナイフをしまう。そして、レイの髪を少し整えてから、ガーベラを耳にかけてやった。

「うん、思った通りだ。よく似合う」

自分のそれとはまた違う、艶のある銀髪にその赤はよく映えた。
もちろん、ふとした行為であって、似合うだろうな、と予想してのものだ。他意はない(好意はあるけど、それ関係なしに本当に突発的だった)
が、レイの頬がみるみる赤くなっていくのを見て、ちょっと動揺してしまった。

「な、レイ…っ、どうした!?」

余計なことをしてしまっただろうか。
慌てて聞くが、レイは花束で自分の顔を隠してしまい答えないので分からず仕舞いだった。


(……っ、フリオってばズルい…!)(えっ)

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