吸血鬼 健康管理 蝋燭作家 アトリエ
パラフィン+ステリン(スプーン一杯程度、気泡が入らない)+融点の低いパラフィン
融点の低いパラフィンは、粘り気がある。小さくなるのを防ぐために使用。真夏に入れすぎるとドロドロになるので注意。
これらを湯煎にかける。80〜90℃ここでチョークやパステルカラーなど顔料をいれたきゃいれる。カービングナイフで削る。
モザイクタイルなどを使う場合は、バッドにいれてさまし、切り込みをいれてモザイクを量産。型の内側にはりつけていく。60〜50℃の蝋燭を流し込む。グラデにしたければ熱い蝋燭を流しこむ。
芯はたこいと、紙、木など。
大豆、蜜蝋、ヤシで出来たパラフィンはオーガニックで、匂いもいいので人気。
ハワイアンキャンドルはくそ面倒くさい。じゃぶじゃぶつけて色を重ね、カッターで削ってねじったりして花みたいにする。国内だとそうそうない。

我々の認識する吸血鬼といえば、薄幸の美男というのが定石だろうが、うちの吸血鬼ときたら長年の引きこもり生活がたたり腹回りがだらしなく、髪はぼさぼさ。いざって時に橋の下に放り込めば、まさかあの浮浪者が吸血鬼ではあるまいと逃げおおせることが出来るのではと一考してしまうのである。

一松の脂肪は夏場でもひんやりとして、ぬるくなった保冷剤みたいだ。

「いただきます」
「どう?」
「口当たりが悪い。ビタミン足りてないんじゃないの」

血液ソムリエたる一松は食事の度にこうしたアドヴァイスをする。
冷蔵庫にも風呂焚き機能がついているのだ。吸血鬼に健康管理機能くらいついて良い。

皿にこびりついたソースを舐めとるみたく、うだる暑さに滲んだ汗を、一松の舌が攫っていく。ただでさえくすぐったいというのに、耳の裏側からうなじにかけてのラインは、わざと尖らせた舌で遊んでいく。生理的に身じろぎすると、逃がすまいと腕を強く捕まれる。荒い息に混じって、キヒッと悪魔みたいな笑い声が聞こえた。

「舐めるなら舐めるでもうちょっと普通にやってほしいんだけど…」
そもそも普通に舐めるってなんだ。自問しながら文句を垂れると、「やだ」の代わりにわざとらしくびちゃびちゃ音が鳴った。実家で飼っていた犬のほうがよほど上品に人の顔を舐めたぞ。
「虫除けオイルみたいなもんですよ。こうしとくと蚊が寄ってこないでしょ」
「何それ初耳」
「だろうね。俺も初耳」
何こいつ。

「外で飯食ってんじゃねぇ。俺の飯が不味くなる」
「遅くなるって言ったよね?」

「うっせぇ。産地ハッキリさせたいんだよ」

「早く、いつものして」
一松がねだるのでパルバックスのランタンを傾けると、熱でぐだぐだになった蝋燭が重力に従って落ちた。一松の不健康な肌に白い斑点がぼたぼた落ちて、病気みたいな皮膚になる。
お前も蝋人形にしてやろうかァ…。と頭の隅で閣下が高笑いをしたが、私はといえば素直に気持ち悪いなぁ、と眉を潜めるばかりである。
一松は恍惚としている。
人に痛い思いをさせて血を啜る代償がこの性癖というなら、神様は本当に意地が悪い。
そんなに痛いのが好きなら勝手に火をつけて蝋燭風呂であったまってくれと思うが、糞マゾ曰く、「餌になぶられるからいいんだろ」らしい。

ハワイアンキャンドルを思い出した。
何層にも重ねた蝋をカッターで薄く削り、ねじって、またくっつける。螺旋状の一松の塔が咲く。
芯は何にしよう。タコ糸か紙か、いや刺すのであれば木がいいか。
想像して気持ち悪くなってきたので素直に顔に出すと、「いいねェその目」と一松くんが興奮しだした。違う、そっちじゃない。いや気持ち悪いけど。

人の細胞は八年で入れ替わる。
私の血をすすって生きる一松の八年後を、蝋で固めてやりたい。

「夏バテする」
私はレバニラを食べながら、一松は私の血を飲むのです。クッソ痛いのですが仕方がない。
私達は互いに命を紡ぎあうのです。
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -