何気なく手を伸ばした先に、触れるものはない。風が通り過ぎる。掌に陽の光が当たる。ぼんやりとした温かさは、私の存在を緩やかに溶かしてくれないだろうか。

 縁側で仰向けに寝転がる私の隣に、黒い毛の犬が伏せる。寄り添う体温が徐々に上がっていくようだ。寝息を立てるまで時間は長くかからないだろう。黒い毛を撫でていると、片割れのもう一匹が寄ってくる。空いている片方の手の側に、白い毛の犬は、私に背を向け腰を下ろす。私も撫でないのか、と言わんばかりに振り向き見つめる様は愛おしい。両方の手を犬に支配され、私はもう一匹を目で追った。

 日に照らされ、より黄金色に輝く髪の男は、どこか優雅な動作で洗濯物を取り込んでいる。
「優男め」
小さくつぶやいた言葉に、金色の頭に付いた二つの垂れた犬の耳がピクリと反応する。こちらを振り向き、笑みをこぼす。
「ありがとうございます」
「褒めてない」
 エドは乾いた衣類を詰めたかごをそっと板の間に置き、私の足元に座る。一枚ずつ取り出し、洋服は丁寧に畳まれていく。そして、衣類の山が積み上がっていく。視界に衣類の山が入り込み、先ほどまで見ていた風景が少しずつ変わっていく。
「まだ溶けないな」
「クイズですか?」
箪笥に服を仕舞うために、山を持ち上げたエドが首を傾げる。
「いや、なんでもないよ」


もう少し、
ひなたぼっこを続けよう

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