『入れ替わったァ!?』
ダイニングで口を揃えて叫んだ面々。その前に居るのは、どこか居心地が悪そうにして眉尻を下げている『サンジ』と、そして吸えもしない煙草を口にくわえているおれーー『ウソップ』だった。
「入れ替わったってなにそれいきなり、いったいどうしたって言うのよ? なんか悪いもんでも食べたの?」
「んー、そういう訳じゃない、筈なんだけど」
「ってんな自信なさげに答えるんじゃねェよ、おれがついてててめェにんなもん食わせる訳ねェだろ」
「うん……、ごめん、解ってる」
しょんぼりと落ち込んだおれの頭を撫でて、ってどうにもクソおちつかねェんだが中身がおれじゃないってのは自分が一番よくわかってるのでその見た目は気にせずにおくことにする。そう思ってる時点で気にしてるのは自分でも解ってるけどな。
「(みた……? いまのみた?)」
「(そうね……、ウソップが煙草くわえてるのも妙だけれど)」
「(問題は……あっちだな)」
現に周囲から見てもかなりアレな光景だったらしく、こっそり顔をつきあわせてこそこそしだす仲間たち。言うな。自分でも思ってる。どうしてウソップだとかわいいのに、顔が変わるだけでこうも不気味なのかと。
うるっと目を潤ませて「さんじぃ……」なんて言う自分に一番慣れねェのはおれだぞ多分。
「うー。おれたち元にもどれんのかな……? 原因もわかんねェし、ってかおれこのままじゃ落ち着かねェよう……」
「クソおちつかねェのはおれも同じだ。っつか、まだなんも調べてねェのにそこまで落ち込んでんじゃねェよ、原因なんざその辺に転がってるかもしんねェだろ?」
「あら、これかしら」
「そうそう、その辺にころがってるそれが原因かも……………………」
『え?』
いきなり割り込んできたロビンちゃんの声に、全員そろってそっちを向いた。床に転がっていたらしいなにかを拾っていたロビンちゃんが、にっこりと笑ってあるものを差し出してくる。
「え、なんだロビンこれ……『恋人と心がはなれたときのおまじな……、いぃぃい!?」
「はァ?! おいまててめェいつのまにおれと心が離れたって言うんだ浮気かこらァ!?」
「んがっ!? な、ま、ま、くび、くびしま、……っ」
「あーオイオイ、スーパーに落ち着け。死ぬぞ。お前がというかウソップがと言うか、どっちかはしらねェけどヨウ」
「あ」
あわてて手を離すと、思いっきり首の締まってたウソップが地面に崩れ落ちる。
「あー、死ぬかと思った……」
「そのくらいでおれの身体はどうのこうのならねェから大丈夫だ、多分」
「多分で殺されちゃたまんねェしお前を道連れなんてもっとやだからなおれ。ーーで、なんだって? ロビン」
ロビンちゃんが差し出したのは一個のおもちゃみてェなもんだった。砂時計? みたいな。中で二種類の液体が行ったり来たりする仕組み、か? こりゃ。って考えてたら横でそれをみたおれのかおをしたウソップが声を上げた。
「あ、それなんかさっき甲板に転がってたやつだ! 拾ったところから覚えてねぇ!!」
「ってお前か原因は!!!!!」
「うわっ、うわっ、悪いごめん巻き込んだみたい、って謝ってるだろ足あげんなこわいっ!!」
「うるせェこのクソっ鼻ァ!!!!!!」
「あいて、いて……、って、あんま痛く、ねェ?」
げしげし蹴りをいれてやったのに、いつもと違って平然としてるウソップ。んの、クソっ鼻のくせに生意気だぞこらぁ!!!
「うわっ、ごめ、痛いって、やめ、げしげし、すんなぁ!」
「うるせ、てめ、えが、浮気なんか、する、から、ってか、心、はなれた、とか、なに、さまの、つもりだ、こらァ!!!!!」
げしげしげしげしげしげしげしげしっ!!!! って蹴りいれてやったところでほとんどきかねェらしいのがまた一層腹が立つ。こんにゃろっ!!!
「くそったれ!! いいかウソップ、てめえの心が離れようともな、おれは何度だっててめェを惚れさせてみせるからなっ!!!」
床に転がったままの『サンジ』の顎を片手で掴んで、そのままその唇を重ねた。自分の顔なんて気味の悪ィも間近でみたかねェから目を閉じておもいっきりその口内を貪る。心はなれたとか軽く言いやがっててめェこのやろ、なんて思ってたら暫く迷ってたらしいウソップの舌もおれの舌に絡めてきて、その熱いキスに溺れた。
「……あら。心離れた恋人もこれで! 熱い恋人同士には、衝撃的な夜を
! ですって。キスで戻るって書いてあるわね」
そんなおれたちを呆れた顔で見下ろす仲間たちの中で、ひとり平然としてさっきの砂時計もどきを見ていたロビンちゃんがぽつり。
「もう戻ってるんじゃないかしら?」
『へ?』
「戻ってんのか? おーいサンジ、腹減ったメシ!」
「あ!? んな余裕なんかあるかっ!! このクソっ鼻におれの愛を……、あん?」
「え。……さん、じ?」
「ウソップ?」
「え、え、戻ってるのかふたりとも!?」
「も、どってる、みたい」
「ーーだな」
自分の手をぱかぱか開いて確認してみる。目の前で煙草をくわえたままのウソップからその煙草を奪い取り、自分でくわえた。……ああ、確かにおれだなァ。慣れ親しんだ仕草で煙草に火を点けながら、にやりと笑う。
「戻ったのか! じゃあサンジメシ!!!!!」
いつも通りに叫ぶ船長を横目に、座り込んだままのウソップの首根っこをつかみあげる。
「ーーうぇ? さ、んじ?」
「ーー悪いが船長、メシはお預けだ。こっちの方がさきだからなァ」
「え、え、さん、じ? なんか目が、こわ」
「こいつにおれの愛ってモンをこれでもかって教えこんどかねェと、なァ? ウソップ」
「ええええええええ!?」
「文句は気かねェ。覚悟しやがれこの野郎」
「ま、まって、おれ、えええええええ別に浮気なんてしてねえよぉおおおっ!!!!?」
「うるせえ!!!! 文句はベッドでなら聞いてやる!!!!」
「ええええええええええええ!!!!!!?」
「ーー……、あらあら、あの様子じゃロビンの言葉聞こえてないみたいねサンジ君」
「いいんじゃないかしら? 恋人たちの衝撃的な夜にはなったのなら、これの役目も果たされてるもの」
「ーー……、まあ、ウソップにとっちゃただの災難ってことか」
残された仲間たちの間でそんなやりとりが繰り広げられていたとは、つゆほどにも知らず。
「いいかこの野郎、二度と浮気や心変わりなんてさせてやらねェからな!!!」
「うぇえええおれなんのことかわかんねェよぉおおっ!!!」
ーーまあ、十分すぎるくらいに熱い夜にはなったので、終わりよければすべてよし、で。
「よくねェよぉおーー!!!!!」
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お誕生日に、かんのちゃんからいただいたサンウソ小説です!
リクエストOKだったので「入れ替わりサンウソ」とお願いしました。
かんのちゃんの書く一味の様子は原作のギャグ場面とテンポが凄く似ていて、脳内で漫画化もできるしみんなが喋ってるところを想像することもできるんです(;_;)すごい(;_;)
そして確かリクエストしてから一日…いや、半日?で、こちらの作品を贈ってくれた気がする…!!は、は、速い!!!す、す、すごい!!!
冒頭の、外見メソメソサンジと外見横暴ウソップがすんごく面白くてニヤニヤワクワクしちゃいました!タバコ咥えて「あぁん!?」とか言ってるウソップ、メチャ見たい…!!
かんのちゃん、素敵な作品をありがとうございます!!
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