震える両足じゃ立てない
だってみっともないじゃないか
誰かと目が合う度、思う
査定されてるようだ
震える両手は掲げない
だって格好悪いじゃないか
隙を見せた途端きっと
すぐに攻め込まれるんだろう

痛い 辛い 怖い 暗い
きみはうずくまり
膝を濡らそうとする けど

泣くなよ まだ
きみが始めた物語だ
捲れ 最後の一ページまで
見えるか ほら
あの幕は今、誰が為に上がる
震える両足とその手で いいんだよ


震える喉では歌えない
笑われるのが目に見えてる
自分しか歌えない歌だって
一つもないしな

虚な瞳できみは俯いて
鼻をすすろうとする けど

泣くなよ まだ
きみだけに歌える全てを
叫べよ 最後の一小節まで
見えるか ほら
あの幕は今、誰が為に上がる
震えるその声とその歌で いいんだよ


聞こえるか ほら
降り注ぐ拍手の音が
見えるか ほら
きみを見つめる僕が
届くか ほら
砕けた心の欠片が今
きみだけに光って、瞬いて、貫いて

泣くなよ まだ
僕は席を立ち上がり
駆けるよ 舞台のきみの元へ
届けるよ いま
あの幕が閉じてしまうその前に
びしょ濡れの心を 手作りの花束を
きみに

2020/03/05 11:49













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