きみと過ごす夏 | ナノ

「ねぇ、シリウス。待ってよ!」
太陽が照りつける真夏の日、シリウスに連れられて知らない場所に来た。私には知らないシリウスが知っている場所。つい最近お互いに姿くらましを習得したばかりだった。まだ慣れない姿くらましに少し気持ち悪くなり、連れてこられたのがこの場所だった。
なんていうか、離れ孤島という感じ。遠くの方では波の音が聞こえる。きっとすぐ近くに海があるんだろう。心地いい波の音を他所に、さっきからシリウスは私の手首をぐいぐいと引っ張って早歩きで歩く。
「待ってってば」
「ねぇ」と言ってもシリウスは早歩きをやめようとしない。むしろどんどん歩くのが速くなっている。
背の高い草の群れをかき分けどんどんと歩いて行く。自分たちより背が高い草だ。周りが何も見えない。
「ここだ」
シリウスは急に立ち止まると私の方に振り向いた。急に立ち止まるから頭が背中にぶつかってしまい「お前どんだけ石頭なんだよ!いてーよ!」と言われて悪態をつかれてしまった。確かに私は石頭かもしれない。なぜかいつもシリウスが私の頭にぶつかる度に痛い痛い言っているような気がする。いや、違う。シリウスが脆いだけ。そう思っておく。
シリウスは自分の背中をさすりながら「ここだよ。ここに連れてきたかった」と言って笑った。
「ここ…?何もないよ」
「バッカ。そっちじゃなくて!」
右を向いている私の首を無理やり真っ直ぐに向けられその衝撃でぼきっと鳴った気がする。たぶんシリウスから見ると私はすごい表情をしていると思う。シリウスの顔がそう語っている。思いきり平謝りされた。自分ではそんな顔をしているつもりはなかったけどそんなに怖い顔をしているのかな。今度からこの顔をすることに静かに決心した。
「怒るなよ!俺が悪かったから!」
「怒ってないよ!」
「あれ?怒ってない?」
「うん」
「あっそ。じゃあいいや」
「いいんだ」
「うん」
いや、そうじゃなくて。とシリウスが思い出したように私に「俺の方見るんじゃなくて真っ直ぐ向け!」と言うから渋々言うことを聞くことにした。
「ひまわり…?」
「そ、お前ひまわり好きだろ?」
にこっと笑うシリウスの笑顔が眩しい。シリウスの笑顔は眼前に広がるひまわり畑によく映える。
ひまわり。私が一番好きなお花。私達が低学年の頃に交わした約束をシリウスはまだ覚えていたんだ。
「シリウス、ちゃんと覚えてたんだ」
「何でかな」
シリウスは得意げな顔をして見せた。
正直、悪いけど私は忘れていた。そう告げるとシリウスはありえねぇ!はぁ!?と憤慨していた。そりゃあそうだ。せっかく連れてきてもらったのに忘れられてるとか、悲しい。
「連れてこられて思い出したんだけど、シリウスはちゃんと覚えてたんだね」
「当たり前だろ!あのときのお前すげーうるさかったんだからな。大きくなったら連れてけ連れてけって」
「うーん。言われてみたらそんなこと言った気がする」
「覚えてるのはそこだけだろーが!」
お尻めがけてキックされてしまった。ちゃんと思い出したのに理不尽にも程がある!お尻を抑えてうずくまっていると「ほら、大丈夫かよ」と手を差し伸べられた。
「大丈夫じゃない」
「悪かったな」
「嫌だ」
「ワガママな奴だな」
うずくまっていると突然抱き上げられてしまった。いわゆる、その、お姫様だっこ。お姫様だっこのまま、いきなりひまわり畑に向かって走り出すから落ちそうで死ぬかと思った。ムードなんてあったもんじゃない。でも大好きなひまわりを見れて、シリウスと一緒にいれて、とても楽しい1日になりました。帰りに海に投げられたときはさすがにブチ切れそうになりました。


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