この日を、待っていた「チィ…届かねぇ」 「この本かな?」 昼休み。 図書室でようやく目当ての本を見つけ、手を伸ばすも…少々届かず、思わず呟くと後方から手が伸びてきた。 (…確か、こいつ) 一昨日の始業式で紹介されていた、新しくこの学園に赴任してきた物理の教師だ。 (なんで物理の教師がこんな所にいるんだ) 「はい、どうぞ」 「…ありがとうございます」 「ねぇ。君さ、うちはサスケ君でしょ」 「はぁ…そうですけど」 なんで既に名前を覚えられているのか、とかなんで本棚に押さえ付けられるようにしているのか、とか… 思ってはいるのにどこか、他人事のような気がしていた。 だからきっと、何の反応もできなかったのだろうと思う。 急に ──キス、されても。 「次、物理だからよろしくね」 そう告げて去ろうとする背中を見て、ようやく体が動いた。 「ちょっ、アンタ、今のっ…」 「理由は放課後の補習でね〜」 背を向けたまま、ひらひらと手を振って出ていってしまった。 (補習?冗談じゃない。学年トップのオレが…ってそうじゃなくて) 響き渡るチャイムの音。予鈴だ。 『次、物理だから』 (あぁ、クソっ。考えるヒマがねぇ) 始まりの日 (見つけたんだよ) |