始まり




「もうさよならだよ…」

そう言って、ゆっくりとカカシが近付いてくる。最期がアンタになら、いいかもな。
「でも、お前1人で逝かせやしないよ」
俺もすぐ逝くから――
だから、ほんのしばしの別れだ。そう言って微笑んだ。
アンタ馬鹿だ。俺の事なんか、もう放っておけばいいのに。いつまでも甘やかすんだな。それで俺は、いつまでもアンタに甘えるんだ。
「ごめんな、サスケ」
「謝るなよ」
こんな方法しか選べないのが、俺達だ。
そして右手にチャクラが集まった。――俺と同じ輝き。

あぁ、千鳥って綺麗だな。
アンタと俺だけの、輝き。

「これからは、一緒にいられるといいな」
「そうだな」
目と目が合う。俺はしゃがんだ状態だから、見上げる形だ。
一つ、ゆっくり呼吸をしてから徐に立ち上がった。
「今度こそ一緒に暮らそうよ」
「そうだな」
「毎日ご飯作ってね」
「毎日しっかり働けよ」
はたから見れば、命を終わらせる前とは思えない会話だ。
だけどこれでいい。俺達にとっては、始まりだ。

「子供は男1人女1人がいいな」
「産めるか、このウスラトンカチ」
思わず笑いあう。それから、印を結んだ。左手にカカシと同じ輝き。
カカシがゆっくりと近づいてくる。
「もうチャクラがほとんど無いからな…俺の千鳥じゃ」
「大丈夫」
刹那、そう言って俺を抱き締めた。カカシを貫く俺の千鳥。カカシの雷切は俺の背中から俺を貫いて、更にカカシをも貫いていた。
「傷…つけちゃってごめん、ね」
「ア、ンタになら…構わねぇ、よ」
「…少しの間だけ、さよなら…」
「…あぁ。また、な…カカ…シ……」

次に会った時には、一番最初に伝えるよ。



(昔も今もこれからも、愛してる)






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