7月7日




「1年に一度でも…必ず会えるなら、いいんじゃないか?」


そう聞いたのはいつの七夕だったか。
(…4年前、か)
部下というものを受け持った、初めての年。ちょうど、旧家からもらった笹を里の中心に設置する任務だった。

「うわーっ!すげぇでっかいってばよ!!」
「本当、改めて見るとすごい立派よねぇ」
設置した笹を下から見上げたナルトとサクラが叫ぶ。様々な形や色とりどりの飾りもついて、だいぶ華やかになった。
「ねぇ、サスケ」
じっと隣で笹を見上げているサスケに、自分も笹を見つめたまま声を掛ける。
「1年に一度しか会えないなんて、悲しすぎると思わない?」
笹を見ながらの話だ。何が1年に一度しかなのかなんて、伝えなくてもわかっているようだ。サスケの視線がこちらに移ったのがわかる。けれど、敢えて見ずに続けた。
「たった365分の1だよ。残りの365分の364は会えないんだよ」
「…そうだな」
ふいと視線を再び笹に移し、サスケが答える。
ナルトとサクラは、自分達が作った飾りを確認しているようだ。楽しそうな声が聞こえる。
「淋しいと思わない?」
どこにいるかもわかってるのに、7月7日その日だけしか会えないなんて。
「1年に一度でも、必ず会えるならいいんじゃないか?」
「…え?」
瞬間、ざぁっと強い風が吹いた。
髪でサスケの表情が隠れる。どういう意味で言ったのだろう。表情を見たいと思った。


(…1年に一度でも、必ず会えるならいい…か。そうだよな。なんとなく、今なら少しわかる気もする)
サスケが里を抜けて、早3年…
その間一度も会えなかった。近くにはいたかもしれないのに。
いつもそうだ。

(織り姫と彦星みたいにはなれなかったね)

今年も里の中心に設置された、大きな笹を夜空を背景にして見上げながら1人思う。
会いたい。
1年に一度しか会えなくてもいいから。必ず会えるなら。

サスケに、会いたい。




(365分の1)