光忠の作る飯は美味い

お花見に行こうと言い出した。
山のツツジがきれいだった、とお散歩に出ていた大倶利伽羅から聞いたのだと言う。
言い出しっぺは短刀達。
さすがに五虎退や前田や平野、とどめの秋田からお花見お花見!…と言われては要求を飲まざるを得ない。
なので歌仙や彼や私が腕を奮い、お弁当を作って出かけることにしたのだ。
短刀達用のお弁当は、3種の混ぜご飯おにぎりにタコさんウインナーに卵焼きにマカロニサラダにプチトマト。
私達用には、五目おこわのおにぎりに卵焼きに唐揚げにマカロニサラダにブロッコリー。
次郎が酒のつまみになりそうなものを作っていた。
さて準備は整いお花見決行。
天気もいい。
赤や桃色、白。
山の緑に映えるツツジの花々。
美しい風景が広がっている。
頂上の拓けたところにシートを敷いてお花見開始だ。
「来てよかったなぁ」
そう呟くと、歌仙がにこやかに言う。
「大倶利伽羅君に感謝しないとね」
あとで聞いた話だが、大倶利伽羅はよく本丸の外に出て散歩をするのだそうだ。
こうして身近にあるきれいな風景を探しているのだろうか?
大倶利伽羅は黙々とお弁当に手を伸ばしている。
そんな大倶利伽羅に彼は感謝の言葉をかけた。
「ありがとう伽羅ちゃん、よくこんな場所見つけたね」
「別に…」
そっけない態度だが、これはちょっと照れている。
最近、大倶利伽羅の感情が読み取れるようになってきた。
大倶利伽羅は実にかわいい。
「君の分は多目にしてある、たくさん食べてくれ」
歌仙の言葉にうなずいて、黙々とお弁当を突つく。
次郎は飲兵衛と始めているようだ。
「はぁ…のんびりした日だ」
ツツジを眺めながら私もお弁当を突つく。
「たまにはいいよね、こういう日も」
彼もお弁当を突つきながら、のんびりと返す。
「…五目おこわと唐揚げ」
「うん?」
「光忠の担当だったなと思って」
「それがどうしたんだい?」
「…美味しい」
「ありがとう」
「やっぱり胃袋攻められたら弱いなぁ」
「どっちが!僕は君に胃袋を掴まれたんだよ?」
美味しいものを食べさせてあげよう…と言う気持ちはあったが、そういう気はなかった。
「だから逆に君の胃袋を掴んでやろうと料理の勉強に励んだのはあるかな、元々料理好きだったけど」
「光忠、本当に自分に正直に生きてるな」
「肉体を持ったら楽しくてね」
それは…もう刀として生きることができなくなった自分が、再び刀として生きることができた喜びもあるんだろうか?
「感謝してるよ、君には」
「何を急に…」
らしくない彼の言葉に戸惑っていたら、次郎が乱入してきた。
「キャハハハハ!主!飲んでるぅ?」
「まだ飲んでない!」
「じゃあ飲もう!燭台切も一緒だよぉ!」
賑やかな次郎につられて、ぐいっと一杯。
「さすが!いい飲みっぷりだね!ほら、燭台切もだ!」
飲まされてへろへろになってる彼を哀れに思いながら杯を重ねる。
これ持って帰るの大変だなぁ…。
誰かに手伝ってもらわなきゃ。
そんなことを思いながら…。
彼の作るお弁当は美味しい。
毎日彼の料理を食べられる喜びに浸りながら、へろへろの彼の頭を撫でた。

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