愛しい寝顔

辺りはまだ暗い。
こんな時間に目が覚めるなんて。
朝餉の仕度にもまだ早い。
腕の中の彼女はまだ夢の中だ。
胸に顔を埋めているので顔は見えない。
でも規則的な呼吸を繰り返しているところを見ると、いい夢を見ているのだろう。
少し早いけど、身仕度を整えることにした。
彼女を起こさないように布団から出た。
顔を洗って髭をあたって歯を磨いて、内番のジャージに着替えて。
まだ僕のお嫁さんは夢の中だ。
時間まで寝顔を眺めていよう。
横向きに寝て、半開きの口から涎を垂らしている。
ふふふ、無防備だなぁ。
そんなところが堪らなくかわいい。
「ぅん…」
微かな寝言とともに寝返りをうつ。
あぁ、かわいい顔が見れないじゃないか。
僕は彼女に向き合うように寝転がる。
頭を撫でると、より愛しさが込み上げてくる。
かわいいかわいい僕のお嫁さん。
手離せないよなぁ。
「んん…」
ゆっくりと瞼が開く。
数度瞬きしたあと、僕の顔に焦点が合う。
「おはよう」
「いまなんじ…?」
「4時すぎってとこだね、まだ寝てなよ」
「ん…」
彼女何したと思う?
僕の腕の中にすり寄ってきたんだ。
僕の胸に顔を埋めて、再び寝息を立て始めた。
何この子超かわいい。
僕は何度キュン死にしたらいいんだろうか?
ゆっくり髪を梳いて、眠る彼女を堪能する。
何だか僕も眠くなってきた。
目覚ましをかけて一眠りしよう。
そうして気がつけば、目の前にはいたずらっぽく微笑む彼女がいた。
「おはよう」
「あぁおはよ、今何時?」
生欠伸を噛み殺して尋ねる。
「6時だよ、当番でしょ?」
「うん、行ってくる」
「あのね光忠」
「うん?」
「光忠の寝顔、かわいかった」
「君の寝顔もかわいかったよ」
「光忠の寝顔見てるとね、好きだなぁって思っちゃう…光忠がかわいくて堪らないの」
「僕も同じだよ、君がかわいくて仕方ない…君の寝顔見てたら…守ってあげなきゃって…そう思うんだ」
「ふーん?」
「だって君は僕のお嫁さんなんだからね、当然だろう?」
そう言うと彼女はくすくす笑い出す。
「そうね…でも私は守られてばかりじゃないからね?」
「危なっかしいから僕に守られてて?君に怪我なんてされたら、悔やんでも悔やみきれないだろうから」
「善処する」
「アテにならない返事だな」
肩を竦めて見せると、くすくす笑って僕の首に腕を回した。
「でも、光忠が心配するならおとなしくしてるわ」
「そうしてね?」
「さっ、朝餉ができるまで時間があるから鍛刀でもするわ」
「出るのかな?長曾根君」
「やらないとわからないわよ」
そしてしばらくあとに長曾根虎徹が喚べて小躍りしたのは別の話。

[ 66/79 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -