月の綺麗な甘い夜

いつものように彼女の部屋に行く。
でも今夜はちょっと違う。
徳利にお猪口も一緒だ。
今夜はいい月だから、月見酒と洒落こもうと思ったんだ。
そう言えばこうして二人きりでお酒を飲むのは、彼女に告白して以来だろうか。
なんて考えていたら部屋の前に着いた。
「入るよ」
一声かけて中に入ると端末を操作して暇潰しをしていた。
「明日は休みだろ?お酒飲まない?」
「…うん」
身体をこちらに向けはするが視線はそらされたまま。
「次郎さんおすすめのお酒だよ」
「うん」
何だか様子がおかしいな。
「主?」
「…うん」
よく見ると顔が赤い。
首に手を当てて温度を見る。
「具合でも悪いの?」
「そうじゃない…」
「じゃあ…」
「…光忠に告白された時を思い出す…」
そう言って背を向けてしまった。
まったくかわいいんだから。
酒器を置いて彼女の背中から抱き締める。
「何度でも言ってあげるよ?今夜も月が綺麗だね」
「…死んでもいいわ」
「ふふ、死んでもらっちゃ困るな」
「光忠…」
「何だい?」
「お酒、飲も?」
「うん、いい月夜だよ?縁側で飲もうよ」
「うん」
縁側に移動して杯を酌み交わす。
僕も彼女も弱くはないから、それなりに酒が進んだ。
くいっと杯を呷る時の、無防備に晒された喉元にかぶりつきたい。
「何?光忠」
「え?」
「穴が開くほど眺めて」
「あぁ、君が美味しそうで」
「ばか」
「こっち来ない?」
「え?!」
「僕から行っちゃおう」
彼女の隣に腰かける。
肩を抱き寄せ、首筋をぺろりと舐めた。
「光忠…」
「ん?」
「その…」
「どうしたの?」
「意地悪…」
「あとでゆっくり…ね?」
「うん」
ほどよく酔いが回り、気分がよくなったところで僕は催してしまった。
あぁ、性的な意味でね。
どうにも彼女が欲しくて欲しくて堪らなくなって…。
だから僕は彼女に声をかけてから唇を塞ぐ。
酔いが回りいつもより高い体温。
酒の味がする口付けは、僕を追い立てるには充分すぎるほどで。
解放してあげたら、彼女は僕の胸に顔を寄せた。
「顔が見れないだろ」
「光忠の腕の中がいい」
「ワガママだな」
「どっちが」
「ねぇ、したいことがあるんだけど…いいかな?」
「ダメ」
「まだ何も言ってないよ」
「これ以上何かされたらとろけちゃうから」
「もうそんな状態だろ?」
「だからよ」
「じゃあ…もうお開きにしよう」
「え?」
「続きは閨で」
「…うん」
彼女を抱き上げた僕は、そのあととても甘い夜を過ごしたのは言うまでもないだろう。
そんな、月の綺麗な夜だった。

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